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ビジネス

【漁師をなりたい職業へ】「東京チカラめし」「金の蔵」大量閉店のサンコーが水産業に進出 社長が語る使命感とビジネス面での勝算

「金の蔵」の今後について語った長澤成博社長

サンコーの将来について語った長澤成博社長

 かつて“全品270円居酒屋”というコンセプトで人気を集めた飲食チェーン「金の蔵」だが、コロナ禍で大打撃を受けて、いまや東京・池袋の1店舗だけになってしまった。運営会社SANKO MARKETING FOODS(以下、サンコー)は、日常食ブランドである「東京チカラめし」を2014年に大量閉店をしたことでも注目を集めたが、人気ブランドふたつの衰退を経て、見据える先に何があるのか──。代表取締役社長である長澤成博氏にインタビューした。【前後編の後編。前編から読む

「アカマル屋」の展開と水産業への進出

 かつてのサンコーは“山手線の内側”に大きな店舗を出店していたが、今は方針変更し、“山手線の外側”に小さな店を出している。新ブランド「アカマル屋」の店舗はどれも30坪程度で、地元の仲間や家族と気軽に楽しめるような大衆酒場がコンセプトだ。料理も出来合いのものではなく、店内で丁寧に仕込むようにした。2014年に大宮で1号店をオープンし、新小岩や北千住、秋津など、現在は鮮魚店モデルと合わせて18店舗が存在する。

 コロナ禍の中、「アカマル屋」を展開する一方で、サンコーは水産業にも進出している。きっかけは、ひょんなことから生まれた静岡県沼津市にある漁業協同組合との縁だった。

 官公庁などの施設に付属する食堂運営の受託や清掃・除菌事業など、生き残りをかけて新しい事業を立ち上げようと試行錯誤を続けているとき、沼津市の漁協関係者から声がかかった。沼津の魚をサンコーの店舗で提供できないかという提案にとどまらず、飲食業のノウハウを持っているサンコーに対し、漁師の後継者不足や生活の安定、地元の人手不足といった課題の解決まで依頼されたのだ。長澤氏が説明する。

「例えば、静岡県の漁連の方から、『コロナ禍で行き場を失った地元の養殖の鯛を小中学校の給食に出したいが、コロナ禍で捌く人がいない。なんとかならないか』という相談などを受けて、捌いて切り身にして味噌漬けにして給食に出す……といったことから着手しました。こうしたことを地道に続けているうちに、ありがたいことに地元から信頼していただけたようです。漁協との業務提携を皮切りに、地元沼津市から依頼されたことを実直に対応してきた中で、他の地域からもお声がけをいただくようになりました。

 やりとりしている漁業者の方々から水産物を直接仕入れ、その日の朝に水揚げされたものを夕方には店に出すわけですから、新鮮な魚が食べられてお客さんはうれしい。お客さんがうれしいと、サンコーもうれしい。そして、漁業者も生活の安定につながってうれしい。三方良し、です。

 農家と直接契約している飲食チェーンの水産物バージョンとして捉えていただくと近いかもしれません。ただ、農業と違って漁業の場合、たくさん獲れるときと全く獲れないときの差が大きく、安定供給が難しいことや魚価が安定しないという問題があります。他方、飲食店側としては、漁業者から売りやすい魚や魚価の安いものだけをつまみ食いのように買い付けるほうが都合よく、それが農家との直接契約ほど広がっていない原因かもしれません」(以下同)

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