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【郵便事業の窮地】はがき・封書「3割超値上げ」しても翌年には再び赤字転落見込み 焼け石に水で「郵便離れ」さらに拍車か

値上げしても赤字拡大で「焼け石に水」

 郵便事業の赤字化の背景にはいくつかの要因があるが、最大の理由は手紙の需要が激減したことだ。インターネットやSNSの普及で各種請求書のウェブ化が進んだり、各企業が販売促進のためのダイレクトメールの通信費を削減したりしたためだ。ピーク時の2001年度には262億通あった内国郵便物数は、2022年度には45.0%減の144億通にまで落ち込んだ。近年は年賀状の減少も著しい。

郵便物数はピーク時の2001年度から45%マイナス

郵便物数はピーク時の2001年度から45%マイナス

 一方で、コストが削減しづらい経営環境に置かれていることも要因となっている。郵便物の集配を全国展開するには多くの人手を要するため、2022年度の営業費用のうち人件費が66.4%、集配運送委託費が8.3%である。郵便局窓口営業費の約75%も人件費で構成されており、これらを含めたトータルでの人件費は費用全体の約4分の3を占める。

 日本郵便は区分作業の機械化や普通郵便の土曜日の配達を休止するなど業務の効率化を進めてきたが、収支の改善は難しい。組織のスリム化に限界がある中で賃上げに対する社会要請は強まっており、来年度以降の人件費はさらに膨らみそうだ。

 配達用のバイクや車の燃料費の上昇をはじめ諸物価の高騰の影響もあり、総務省の試算によれば、現行料金のまま据え置いた場合、郵便事業の赤字額は2025年度に2376億円、4年後の2028年度には3439億円にまで膨らむという。

 だが、今回の値上げが郵便事業の経営改善に及ぼす効果は極めて限定的だと見られている。同省の試算では想定通りの値上げが実現すれば2025年度こそ67億円の黒字となるが、2026年度には再び400億円の赤字に転落。2028年度には1232億円に達する。まさに焼け石に水である。

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