投資

資産150億円・片山晃氏が考える個人投資家の“勝ち筋” 「数字の分析よりもその先のストーリーを読むことに投資の付加価値を見出す」

疑問を持つことで投資力が磨かれる

 僕にとっての投資とは、現在と未来の価値の間にあるギャップを埋める行為です。それは、変化に気づく力であり、それがもたらす未来を考え抜く発想力や想像力でもあります。この投資力の源泉となるのが、「疑問を持つ」ことです。

 会社帰りに通る道沿いの店がいつも行列をつくっていれば、「この店はどうして繁盛しているのだろう……?」と考える。そのように、普段、何気なく見過ごしていることにもふとした疑問を持つことが、投資力の源になっていきます。

「いつから繁盛しているのだろうか? オープンしたのはいつ? はじめから行列の店だった? ある時から人気が出たとしたら、その前後で何があったのだろう? 味がよくなったから? サービスが受け入れられたから? 宣伝が上手くいったから? それとも、人々の嗜好が変わったのだろうか……?」

 そうして考えながら歩いているうちに、ふと反対側の道路を見やると、新しくできた巨大な商業施設の姿が目に飛び込んできます。「なんだ、そういうことか」。これは投資としてはガッカリのパターンですが、それでも目の前の事象に対して想像力を働かせてひとつの答えを見つけられたわけですから一歩前進です。これがもし、別の駅にある他の系列店でも行列ができているとわかったら、大きな投資のチャンスになります。

 たまたまその時は新しくできた商業施設の集客力のお陰だったという結末だったとしても、このように世の中に起きているあらゆる変化に対して疑問を持ち続ければ、いつか大きな流れを掴む機会が必ずやってきます。

 2010年代に入ってから、電車の中ではスマートフォンでゲームをする人の姿が増え始めました。チラリと画面を覗き見ると、絵合わせのようなゲームをやっている。そういえば、向こうの人も同じゲーム。さっき電車を待っている間に見た人も同じゲーム……あれって一体何なんだろう? そんな風に気づくことができていた人は、今頃は億万長者になれたかもしれないのです。

数字の先にあるストーリーを見る

 決算短信では業績数値の変化を見るものと考えていますが、それはあくまでもきっかけに過ぎません。低PERや低PBRの株を見つけることにあまり意味がないように、ひとりの人間が行える程度の単純な数字の分析にも価値はありません。

 正確にいえば、まだ価値は残っていますが、いずれなくなっていきます。今、人工知能が急速に発達してきていることはよく知られていると思います。それによって、将来多くの職業が失われることになるという衝撃的な予測が話題を呼びました。これが企業分析の分野にも入ってくると、分析のスピードや網羅性の面で、人はコンピューターにまったく歯が立たなくなるでしょう。

 3カ月に1度やってくる決算シーズンでは、3800ある上場企業の大半が1カ月ほどの間に決算短信を発表します。この期間中に1人の人間が、すべての企業の一つひとつの数字について丁寧に見ていくことは実質的に不可能です。でも、AIならそれを簡単にやってのける時代になりつつあります。

 そうでなくとも、こと分析に関しては個人投資家はプロの機関投資家に対して圧倒的に不利な立場にあります。同じ分析をしようにも、その前提となる情報もリソースもまるで足りていないのです。ですから、その土俵で戦うことは極力避けたほうがよいと考えています。

 しかし、「未来を考え通す力」に関しては、人が人の営みを予測していくことなので、まだAIに取って代わられるには時間があるし、同じ人間なのですから機関投資家といえどもそう差はありません。プロなら誰もが今のスマートフォン時代の到来を見越せたかというと、そんなことは全然ないわけです。

 ですから、僕としては今後ますます陳腐化していくであろう単純な数字の分析よりも、その先にあるストーリーを読むことに投資の付加価値を見出そうとしています。先ほどの話と通じますが、決算資料を読み込んで業績の変化に着目し「なぜこうした変化が起こったのだろう?」と疑問を持ち、考えを尽くすのです。

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