飲食店で、高BMIの接客スタッフが担当すると、デザートの注文が4倍、アルコールの注文が17.65%増加するという、驚きの研究結果がある。そこには、客が「この人も食べているから自分も大丈夫」と感じる「ライセンス効果」が働いているのだという。ふくよかな接客スタッフが飲食店の売上を左右する、そのカラクリはどのようなものか。イトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。
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私の個人的な話から始めたい。就職氷河期、真っ只中。ろくに就職活動もせずに選んだ先が、本当にひどいところで、毎日、会社へ行くのが嫌で嫌で仕方がなかった。変なことにだけ勘がするどい社長で、健康を理由に辞めようとしたら、「仮病だろう」と指摘され、逃げるように電話を切ったのを昨日のことのように覚えている。
そんな地獄のような会社生活での唯一の楽しみが、読売新聞社(大阪北区)裏にあったパスタ屋。ウェイターが2人、大柄の双子で、接客中にもバスケのユニフォームを着ていた。そこのカルボナーラのうまいことなんのって、大盛りにして、胡椒をこれでもかってかけて、タバスコを最後振って食べる。これを週3でやっていたら、ブクブクに太っていった。半年ちょっとで会社はやめたけど、あのとき、結構、太ってしまった。
そんなホロ苦い思い出を、思い出させてくれたのが、『ウェイターの体重』という2015年に発表された飲食店の研究論文(原文は“The Waiter’s Weight: Does a Server’s BMI Relate to How Much Food Diners Order?”、著者はTim DoringとBrian Wansinka)だ。なんでこんなことを調べようとしたしたのか、マジ不明だけど、とにかく、ウェイターの体重と、お客さんが飲食店で注文する量を調べたという。それも60ものフルサービスレストランで、497の食事場面を観察し、「食事客と給仕BMIとの間の相互作用」を記録していったとのこと。この論文、ずいぶん引用もされていて、アメリカの飲食界隈では有名になったようだ。
ちなみに、BMIとは、Body Mass Index、体格指数のこと。体重と身長から算出される指標で、肥満度を表すために使われる。計算式は「BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)の2乗」である。たとえば、体重60kgで身長170cm(1.7m)の場合、BMIは〈60÷ (1.7×1.7)= 20.76〉となる。一般的には、BMIが18.5未満で「低体重」、18.5~24.9で「普通体重」、25以上で「肥満」と分類される。健康管理や肥満のリスク評価に役立つが、筋肉量などは考慮されないため、万能ではない。