それは企業の努力でいくらでも可能である。私がマッキンゼーにいた頃は、入社後は毎年20%ずつクビにするという厳しい条件を提示し、それを受け入れた人だけ採用していた。つまり、入社5年後に生き残れる確率は20%だったのである。
ただし在職中は、クビになっても他社で活躍できるだけのトレーニングを徹底的に行なった。さらに、2~5年で辞める人には転職先探しのために4~10か月は従来通りの給料を払い、オフィスの机と椅子も名刺もそのまま使える仕組みにしていた。だから、マッキンゼー出身者は転職しても高給を得ているケースが多いのだ。
重ねて言うが、いま給料が安いと嘆いている日本人は、自社のシステムのせいにするのではなく、他社に高く買ってもらえるスキルを身につけ、自力で高い給料を掴み取る努力をすべきである。そういう意志を持たなければ、豊かな人生は決して手に入らないだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2025-26』(プレジデント社)、『新版 第4の波』(小学館新書)など著書多数。
※週刊ポスト2025年5月9・16日号
『新版 第4の波』(小学館親書)