平均給与は4.8%アップの一方で所得税は3倍の15%増にも
どれだけ取られすぎているのか。国税庁の民間給与実態統計調査のデータを見るとよくわかる。
2023年の給与所得者(サラリーマン)の1人あたりの平均給与(年間)は459.5万円でコロナ前の2019年より4.8%アップした。
それに対して給与所得者が源泉徴収された所得税の総額は、約10.3兆円から11.9兆円へとなんと15%も増えたのだ。給与所得者の人数はほとんど変わっていない(1.5%増)。
政府は「賃上げ、賃上げ」と宣伝しながら、国民が気づかないうちに賃上げ率の3倍もサラリーマンの所得税負担を増やしていたのである。それでは生活が苦しくなるはずだ。
なぜこんなに税金負担が増えるかというと、所得税は給料が多いほど税率が高くなる。物価上昇の局面では、たとえ実質賃金がマイナスでも、賃上げで給料の額面がアップした分、より高い税率の所得税を課せられてしまうからだ。これを専門用語でブラケットクリープと呼び、他の国では控除を引き上げたり、税率区分を変えて減税するが、財務省はそれをやらずに税収増にほくそ笑んでいる。消費減税で物価上昇を抑制するだけでは、この取られすぎた税金は戻ってこない。
荻原氏が「所得税減税」こそが必要とされる理由もそこにあると言う。
「サラリーマンの実質賃金はマイナス。収入は目減りしているのに、名目で賃金が上がっているから所得税が多く取られてしまう。これが今の所得税の状況です。政府はそれを庶民に還元すべきでしょう。それには所得税を減税するのがいい。インフレで増税状態なのだから、一時的ではなく、恒久減税が必要です。所得税を思いきって減税することで、物価高でも消費が活発化し、経済にプラスになります」
日本にこそ、トランプ氏のような「減税バズーカ」が求められている。
※週刊ポスト2025年5月30日号