知らないうちに進んでいるファスナーの変化(イメージ)
お気に入りのファッションブランドの商品を買おうとして、「やっぱり高くなったな」と感じる人も少なくないのではないか。原材料費や物流費の高騰などを理由に、世界中のあらゆる商品で値上げラッシュが続いており、その波はアパレル業界にも及ぶ。米ナイキも5月21日、大人向けのアパレル製品について2~10ドルの値上げを発表したばかりだ。
一方で、できることなら値上げを避けたいという思いから、原材料や部品を変更してコストダウンをはかる“企業努力”の動きもある。あるヨーロッパ発の有名ファッションブランドで、販売員歴10年になるAさん(30代女性)は、「気が付かない人も多いとは思うんですが、ファスナー部分が変わりました」と、商品に使用されているファスナーのメーカーが密かに変わっていることを明かす。
「最近、アウターやワンピースなどのファスナーを締める時にものすごく締めづらいものがあるんです。引手(スライダー)を持っても、閉める部分(エレメント)の左右が全然噛み合わない。ファスナーの裏を見ると、それまではYKKだったのに、なんだか知らない会社の名前が書いてある。金属もなんだか安っぽい。本社から特に何らかの説明があったわけではありませんが、ほぼ間違いなくコストダウンだと思います」(Aさん)
Aさんの勤めるブランドに限らず、さまざまなブランドで“ファスナーの変化”は起きているようだ。Xには、
〈以前買った服とファスナーの頑丈さが全然違う。こういうところに物価高の影響がでるんだな〉
〈初期の商品はYKKなんですが、最近買ったのはノーブランドのパーツだった。どうやら途中で変わったっぽいです〉
〈昔は安い製品でもファスナーがYKKだったのに……〉
などといった嘆きが確認できるほか、洋服は基本的にネット通販を利用するというデザイナーのBさんは、「先日ある通販サイトで買ったパンツのファスナーが粗悪品で、どうやっても締めることができなかった」と嘆く。
たしかに通販では、ファスナーの使い勝手までは確認できない。通販ユーザーに話を聞くと、「大手ECサイトで財布を買ったらファスナー部分が1か月で壊れた」(30代男性・会社員)、「中華系のアパレル通販でスカートを買ったら3回でファスナーが崩壊した」(20代女性・大学生)など、ファスナーにまつわるトラブルが続々と集まった。