毎年100万円ずつ7%で運用すれば“億り人”
「私はよく残業もしましたし、忙しすぎてお金を使う時間も場面もなく、貯金も貯まっていたので年間300万円を投資に回すことができましたが、22歳で貯金ゼロ円の新卒社員でも、働いてお金を貯め、年間100万円ずつ年平均7%で運用すれば53歳で1億円超えを達成できる計算になります。一般的なサラリーマンであっても、“億り人”になれるのです」
だが、実際に年平均7%で運用し続けるのは簡単ではない。しかも買った株式を保有し続ける「ほったらかし投資」で実現するには、将来成長する会社を発掘する“目利き力”が必要になる。とりで氏はどのように銘柄を発掘しているのか。銘柄選びに失敗することはないのだろうか。
「10年後に明るい未来が描ける業界と会社を探して選びます。株式投資で失敗したことはたくさんあります。失敗した時は原因を分析し、失敗しないように投資手法や自分のルールを変更していくのですが、20数年の投資で実感しているのは、やはり本業がしっかりしていて、その上で新しい事業に挑んでいる会社が絶対いい。仮に新規事業が伸び悩んでも、土台の手堅い本業で会社の価値はしっかり残る。新規事業が成功して伸びれば、業績アップで株価上昇や増配も期待できます」
株価が10分の1になる“逆テンバガー”から学んだこと
斬新なビジネスと思われていたものが数年で衰退してしまう失敗例を、とりで氏は打ち明ける。
「株価が買値の10分の1になってしまう“逆テンバガー”を1銘柄、経験しています。フェイス(2025年1月30日に上場廃止)という、携帯電話の着信メロディを手がける会社です。2000年頃から3和音の着メロ配信などで事業を拡大していた同社の株を2003年に、友人に勧められて買いました。購入した当時の株価は9000円台でした。
その後、着メロ自体が衰退していく中で、同社は新しいビジネスを次々と展開していきましたが、どのビジネスも大きな成果を出せず、株価は右肩下がりで推移。最終的に、株価が10分の1の900円を割り込んだ2008年に売却しました。この失敗から、手堅い本業がしっかりあることを銘柄選びの条件に加えました」
堅実な本業がある上で新たな挑戦のビジネスを手がける会社を選ぶには、「10年後、20年後、それ以上に世の中に残るものを見極める力が必要」ととりで氏は強調する。
「その新しいビジネスが花開くまで会社が資金繰りできなく打ち切り、事業が時代を先取りしすぎて世の中に出すには早すぎたなど、“ハズレ”の新ビジネスもあり得ます。でも、手堅い本業があれば耐えられますし、本業が黒字だからチャレンジが許され、チャンスが生まれるのです」
具体的にはどのような実例があるのか問うと、こんな答えが返ってきた。
「たとえば、サイバーエージェント(東証プライム・4751)は、本業はしっかりしていて黒字ですがインターネットテレビ『ABEMA』は赤字が続いています。しかし、赤字続きの事業だからこそ競合他社が出てこないという側面もある。赤字を出しながら規模を拡大し、テレビで放送しないコンテンツやスポーツ中継番組などの独占放送で視聴者を増やしています。儲かるとわかった瞬間、参入者は増えるものですが、『ABEMA』が黒字化で儲けを出す頃に同業他社がこのビジネスに参入するのは難しいでしょう。きちんと本業があり、将来的に独占の可能性があるビジネスを展開する会社に私は期待を寄せます」
とりで氏自身も会社員として働いている。毎月、給料を受け取るサラリーマンの強みとして、「本業から給料が入ってくるので、キャッシュフローが途絶える恐怖や不安から焦って売買することはしなくていいという余裕を持つことができるし、チャレンジもできる」と語る。
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【プロフィール】
とりでみなみ/会社員として働きながら、20代半ばから株式投資を始めた兼業投資家。「50歳までに資産3億円」という目標を約3年前倒しして達成。現在は資産4億円に達している。口座パスワード忘れること5回以上という自称「超長期投資家」。銘柄選定は10年以上持ち続けられるかどうかで判断し、相場が荒れてもひたすら長期分散投資を続けることで現在に至る。
取材・文/上田千春