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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ
令和の米騒動

パニックを煽るメディアと流される国民…「令和の米騒動」への違和感 かつてタイ米を「日本の料理に合わない!」とバッシングした「1993年の米騒動」から進歩はないのか

筆者がタイ米に合う料理を作ってみた

筆者がタイ米に合う料理を作ってみた

 私はこれまでタイに40回以上行き、タイ料理こそ世界の料理では至高と思っています。そんな私からすれば、憤慨ものの事態です。日本でタイ料理を作る人たちも同様の思いだったでしょう。いいですか、タイは日本がコメが足りないから助けてくれたんです。そして、日本は勝手にタイ米を“日本の米と似たようなもの”だと思って、その目論見が外れたから文句をいいまくった。挙句の果てにはネズミ混入まで持ち出して、タイ米の品質と衛生管理の低さを糾弾した。

 この時、テレビではいかにしてタイ米を美味しく食べるか、という企画も見受けられました。寒天を混ぜるといい、でんぷん的なものを混ぜると日本米に近くなる――。いずれも頓珍漢です。タイ米はとにかく日本米と用途が違うのです。刺身には合いません! あなたはパンで刺身を食べようと思いますか!? そのぐらい日本米とタイ米は違うのです。

 しかし、当時の日本人はタイ米に日本米の代替を求め、それが叶わぬとわかると散々悪口を言った。漫画『美味しんぼ』では、タイ米をいかにおいしく食べるか、といった話があり、タイ米の国内入荷に反対していた日本の農家が最後はタイの農家に敬意を表し大団円、という描写がありました。作中に登場する日本の米農家もタイ米と日本米の違いを存分に理解したのです。『美味しんぼ』はフェアな描き方をしたといえるでしょう。

余裕がある人ですら行列に参加する日本人

 この米騒動は、翌1994年には解消されましたが、「なんで我々の食の根幹である米がここまで高騰するんだよ……」と当時の日本政府の農業政策に大学1年生ながら呆れたことを思い出しました。何もなかったかのように我々はその後安い米を食べ続けられる生活を約30年続けましたが、昨年来の米騒動で、国民は大騒ぎしてますね。

 1993年同様、「備蓄米をいかにおいしく食べるか」という特集をテレビは展開しています。小売店に前日から行列を作った人が2000円ほどの備蓄米をGETして大喜びする様をテレビは流す。32年経ってもまったく進歩していない。

 人は少しでも安いものに群がり、余裕がある人ですら、パニックになったら少しでも備蓄量を増やそうと行列に参加する──。パニックを煽るばかりで進歩のないテレビ報道だけでなく、テレビが流す「危機情報」に左右される人たちにも呆れる次第です。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。

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