公立高校の入試はどう変わるのか(写真:イメージマート)
高校授業料の無償化案(今年度から始まる予定の最大年11万8000円を支給する就学支援金制度の所得制限撤廃。私立高校に通う世帯向けの上乗せ分については2026年度から)が注目を集めるなか、政府では従来の公立高校入試で一般的な「単願制」を見直す動きが始まった。4月22日、デジタル行財政改革会議で石破茂首相が「併願制」検討を指示、阿部俊子文科相も会見で「デジタル技術を活用した併願制」のメリットや課題を整理・検討すると発表した。しかし、実はすでに公立高校の「併願制」を導入している府県が存在する。フリーライターの清水典之氏がレポートする。
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202X年の都立高校入試。願書には、第一志望を日比谷にして、西、国立、戸山、立川と第五志望まで上位校を並べて書いた。入試のデキはあまり良くなかったが、そのうちの一校には合格できて進学することができた──。そんな未来がやってくるかもしれない。
4月22日のデジタル行財政改革会議で、メンバーの有識者から、DA(受け入れ保留アルゴリズム)方式の導入による、公立高校入試の「併願制」の実現が提起された。それを受け、石破茂首相は公立高校の「単願制」を是正するよう関係閣僚に指示した。1校しか受けられない単願制では、家計の事情で公立校に通いたい、あるいは確実に合格を取りたい受験生が、難関校にチャレンジできないという現実がある。それを解消するためだという。
DA方式とは耳慣れない言葉だが、高校受験の現実の制度に落とし込むと次のようになる。
まず受験生は志望順位をつけて志望校を複数リストアップして出願し、統一入試を1回受験する。高校側は入試成績上位の受験生から順に合否判定を行ない、不合格となった受験生は第二志望校で同様に判定される。そこで不合格ならさらに第三志望、第四志望……と判定していく。この作業を入試の成績順に繰り返すしくみだ。これなら志望度が高い高校からのみ合格が得られるため、従来の私立「滑り止め」受験も不要になるという。仮に第五志望まで公立高校を選べるなら、冒頭で述べたような未来予想もありうるかもしれない。
現在は関係省庁で検討中で、DA方式が採用されるかは未定だが、いずれにせよ、公立高校が併願できるようになれば、選択肢が増えるので、受験生にとってはありがたい改革のように見える。
しかし、どんな制度でも、何かを優先すれば、別の何かが犠牲になるのが常である。