二番手校や三番手校の入学難易度が上がる弊害も?
仮に公立校を自由に複数選べる併願制になったとすると、トップ校を不合格になった受験生は、滑り止めの私立に進学せず、二番手校や三番手校に降りてきて定員を埋めていくので、その二番手校や三番手校を第一志望にしていた受験生は、押し出されて下の高校へ降りていくことにならないか。玉突きでどんどん上から受験生が降りてくるので、中堅校では単願制の頃なら確実に受かっていた生徒が落ちてしまいかねない。
また、単願制では、公立高校を受験して不合格になった生徒は、滑り止め(併願優遇、合格確約)、あるいは一般入試で合格した私立高校へ進学するのが一般的だが、公立が併願可能になると、公立の上位校を受けて惜しくも不合格になった学力優秀な生徒が、私立に入学してこなくなるかもしれない。
公立高校入試で、併願制が導入されると実際に何が起きるのか。
現在、ほとんどの都道府県の公立高校入試では、推薦選抜や特色選抜との併願を除き、一般選抜は実質的に単願制だが(欠員が出た場合の二次募集などはある)、実はすでに併願制を導入している府県がある。兵庫県、愛知県、京都府の3府県である。
これらの地域で併願制が導入されたとき、何が起きたのか。当時をよく知る、地元密着の学習塾の塾講師、経営者に聞いてみた。
兵庫県では公立高校「2校出願」が可能
兵庫県では、2009年度に公立高校普通科の一般選抜で、一部の学区から順に「複数志願制度」が導入され、現在では県内の全学区で実施されている。この制度では、受験生は学区内の公立高校を第一志望、第二志望の順位をつけて2校まで出願でき、1回の学力検査で両校を受験できる。合否判定はDA方式とほぼ同じだが、第一志望が優先され、20〜30点の「第一志望加算点」(学区によって異なる)がつくのが特徴だ。つまり、第一志望校では、内申点(250点)と学力検査(250点)と加算点(20〜30点)の合計で合否判定されるが、第二志望校では加算点なしで判定を受けるという方式である。
現在、兵庫県下を中心に46校を展開して小中高生に受験指導をしているエディック創造学園(1966年開校)の常務取締役・手嶋孝紀氏は、併願制が導入された当時をこう振り返る。
「確かに、中堅校のあたりでは、単願制の頃だったら確実に合格していたであろう生徒が落ちるという事態が起きましたね。公立は受かったら入学するのが原則なので、上位校を不合格になった生徒が下の高校に降りてきて、その高校に行きたかった生徒を押し出してしまったと考えられます」
やはり“玉突きでの不合格”が起きていたようだ。