兵庫県の公立高校は2009年度から併願制が導入され始めた(画像:イメージマート)
第一志望の加算点が「第二志望を受かりにくくする」結果に
しかも、兵庫県の併願制度では、第一志望加算点があるために、シンプルなDA式とは異なる現象が起きているという。手嶋氏はこの加算点が併願戦略を難しくしていると見る。
「併願が可能になれば、たとえば、長田高校(神戸市長田区)や神戸高校(神戸市灘区)などトップ校を受ける生徒なら、滑り止めで二番手校あたりを第二志望にできると思うじゃないですか。ところが、トップ校を第一志望にして加算点込みで不合格になった生徒が、二番手校の合否判定に回ると、その高校を第一志望にして加算点を上乗せしている生徒と、加算点なしで競ることになり、落ちる可能性が高い。だから、滑り止めにするなら三番手校以下の高校を第二志望に書く必要があるのです」
第一志望に受かりやすくするために加算点というしくみを取り入れたが、その反作用で第二志望に受かりにくくなった。これはトップ校に限らず、二番手校や中堅校でも同じ状況である。結果、第一と第二に書ける高校のレベル差が開き、使いづらい併願制度になっているという。
「導入初年度にある高校の合格発表を見に行ったときの話です。合格発表があるのは第一志望の学校で、掲示板には合格者の番号が貼り出されるのですが、合格先が第一志望なのか第二志望なのかわからないようになっていました。そして窓口で書類を受け取るときに、大きな封筒を渡されたら第一志望校の合格で、入学手続書類が入っている。でも、小さな封筒だったら第二志望校の合格で、その学校へ入学手続書類を取りに行くよう指示する書類が入っているのです。受け取る封筒の大きさで初めてどちらの合格かがわかるのですが、窓口で小さな封筒を受け取った女子生徒が、わっと泣き出して保護者と一緒に走り去っていく姿を目にしました」(手嶋氏)
第一志望と第二志望に書ける学校のレベル差が大きすぎると、受かったにもかかわらず、まるで不合格になったかのように落胆することになる。「第二志望を書かなければ良かった」と後悔することもあるかもしれない。