「行きたい高校を書けなければ併願制の意味はない」
では、公立高校の併願化は、私立高校にはどんな影響を及ぼしたのか。
「公立が併願できるようになったら私立高校に進学する生徒がいなくなるかというと、全然そんなことはなく、実際には私立高校の人気はむしろ高まっています。灘(神戸市東灘区)や白陵(高砂市)など難関校は滑り止めにはなりませんが、須磨学園(神戸市須磨区)が大学進学実績を伸ばし、公立のトップ校を受ける生徒も併願するにあたって、『第二志望の公立校よりも、私立校を選びたい』と考えるケースが増えています。私立では滝川(神戸市須磨区)や雲雀丘(宝塚市)なども人気が高い。私立の授業料無償化で、『絶対に公立に進学する』という生徒は少なくなりつつあります。だから、塾生には『行く気がないのなら、公立の第二志望は書かなくていいよ』『定員割れが起きたらラッキーと思って、行きたい高校を書くといい』などと指導することもあります」(手嶋氏)
是が非でも公立高校に行きたいという生徒にとっては、併願制はありがたい制度ではあるが、私立高校の授業料無償化で、実際にはそういう需要は減ってくるのではないかという。
公立高校の併願制を導入しているのは、兵庫県だけではない。関連記事《【公立高校「併願制」で何が変わるか?】先行事例の愛知県で起こった「公立高校の序列変化」、京都府では「3校3学科」出願制への制度変更も検討》では、36年前から「併願制」を導入している愛知県と、11年前から続く併願制の改革を検討中の京都府の現状をレポートしている。
取材・文/清水典之(フリーライター)