NTTはNTTデータグループの完全子会社化を発表(NTTの島田明・社長=左とNTTデータグループの佐々木裕・社長=右。時事通信フォト)
株価急騰劇の要因となる「親子上場解消」とは──。NTTデータグループの株価は5月7日に3000円を下回っていたが、同9日には3990円に。三菱食品も同7日の5410円から同9日に6330円へ――たった2日でいずれも約1000円の株価上昇を見せた。
この急騰は、5月8日にNTTと三菱商事がそれぞれの上場子会社である冒頭2社について、TOB(株式公開買い付け)で完全子会社化すると発表したことを受けてのものだった。親会社も子会社も上場している状況を改める「親子上場解消」と呼ばれる動きだ。
6月に入ってからもトヨタ自動車の源流である豊田自動織機が、トヨタグループのTOBによって株式非公開化を進めると発表。豊田自動織機の場合はかねてTOB観測が高まっており、4月下旬に1万3000円台から1万6000円台へと一気に上昇していた。
また、2月28日にイオンが施設管理子会社・イオンディライトのTOBを発表した直後も、同様の急騰があった。
なぜ、大企業が相次いで親子上場解消に動いているのか。特有の事象に対して発生する値動きの特徴を利用して利益をあげる「イベント投資」を得意とする億り人で、個人投資家の羽根英樹氏が説明する。
「海外投資家やアクティビスト(物言う株主)が『親子上場』を厳しく批判してきたことが背景にあります。親会社と子会社の間に利益相反が生まれることや、少数株主が蔑ろにされる、上場維持コストがかかる、といった問題が指摘されてきた。東京証券取引所も今年2月に『親子上場等に関する投資者の目線』というレポートを公表するなど、解消を促す動きが高まっています」