企業側、株主側それぞれにメリット
回転寿司チェーン「スシロー」、大衆寿司居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉」などを運営するFOOD & LIFE COMPANIES(東証プライム・3563)は2024年12月発送分から紙の株主優待券を廃止して電子化に移行しているが、利便性を向上させる目的で2025 年9月末基準日分(2025年12月下旬発送分)から電子チケットの機能を変更する。従来は会計金額に応じた割引券として利用できたが、変更後は会計金額に関わらず1円単位で使えるようになり、優待額全額を使うこともできるようになる。
外食系銘柄だけでなく、ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開する共立メンテナンス(東証プライム・9616)も2025年7月上旬発送分から株主優待割引券などの配布方法を紙から電子チケットに変更する。従来は1000円単位での利用のみだったが、電子化により1円単位で利用できるようになる。
株主優待券の電子化は企業側、株主側それぞれにメリットがあると澤井氏は話す。
「株主優待を電子チケットにすることにより、企業側には紙代、印刷や配送などの費用、手間を削減できるメリットがあります。紙の優待券の場合、偽造防止のために番号、すかしを入れたりなどのコストもかかりますが、デジタル化すればその必要もなくなります。そうしたコスト・手間の削減により、優待を拡充したり、新設したりする企業が増えれば株主側も“お得”になる。従来の現物贈呈よりも増額された電子チケットを優待に導入した銘柄もあります。電子チケットで利便性が向上する恩恵も株主は受けられます」
別記事《“優待弁護士”澤井康生氏が「6月権利確定」の注目3銘柄をピックアップ ファミレスで、自販機で使える電子チケットのお得感、5年ぶりに優待復活の銘柄も》では、電子チケットを新設した企業や株主優待を復活させた企業など、2025年6月権利確定の注目3銘柄を澤井氏が厳選して紹介している。
【プロフィール】
澤井康生(さわい・やすお)/秋法律事務所弁護士。1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。警察官僚、警視庁刑事として事件現場の捜査も経験。警察庁退官後、2003年に旧司法試験に合格。弁護士として活動しながら早稲田大学大学院でファイナンスMBAを取得。企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件など幅広く手がけるとともに、東京簡易裁判所の非常勤裁判官を歴任。企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。陸上自衛隊予備自衛官2等陸佐(中佐相当官)。刑事法に詳しい弁護士としてテレビや新聞にも多数出演。個人投資家として株主優待ライフを楽しむ「優待弁護士」としてメディア出演も多い。
取材・文/上田千春