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キャリア
総合型選抜に潜む教育格差

「一般選抜は公平だ」は本当か?アメリカも日本も難関大受験で強いのは「重課金された」富裕層の子供 一発勝負のペーパーテストにこそ潜む教育格差

アメリカの難関大学の入試で「スポーツをやっていないとダメということはない」

 海外進学に関してはいろんな噂がまことしやかに流れている。

 その1つが「経験がすべてだから、スポーツや演劇、海外経験などの活動実績が必要だ」ということだ。アメリカの大学入試対策の本を読んでいてもそう書かれている。

 スポーツはまず費用がかかる。また、アメリカは車社会だから練習や試合に行くには親が車で送迎をする必要があろう。そうなると高校生がスポーツをしっかりやるには親の経済的・時間的な負担が発生する。スポーツの経験が合否に関係するのであれば、自然と富裕層が有利になろう。

 この「スポーツをやっているとアメリカの難関大学入試で有利」という説の真偽はどうなのか。英語指導や海外大学受験の老舗名門塾、トフルゼミナールの企画業務部長・加藤芳明さんはこう話す。

「スポーツをやっていないとダメということはまずありませんね。一番評価されるのは周囲の人たちを巻きこんでいくような活動を自発的に起こしたものです」(※『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)より)

 まったくその通りで、アメリカの名門大学に合格した日本の学生たちの活動実績を見ると、地域のボランティア活動をスタートさせ、参加者を増やし、本格的なものにしていったという地道な活動も目立つ。それはゴミ拾いだったり、地元の公共図書館で読書会を開くといった地元密着で高校生らしい堅実な活動だ。費用もあまりかからない。

 これらの事実を知って一記者として推測したのは、「アメリカの大学入試が経験重視で、スポーツや演劇、海外経験などが大切だ」というのは、そういった「経験」を販売している業者が広めたものではないかということだ。

 前出の『運も実力のうち』には、「スポーツの練習、ダンスと音楽のレッスン、山ほどの課外活動や公共奉仕活動を、たいがいは個人向け受験コンサルタントの助言と指導の下にこなさなければならないためだ」という記述がある。

 こういった業者が「経験」を売るのだ。それは非常に利益が出やすいビジネスだ。

 日本の大学総合型選抜対策もそうだ。ある新興の総合型選抜対策塾は、旅行代理店から仕入れる観光ツアーに「留学プログラム」という名前をつけて転売する。一人に売れたら30万円ほどの中抜きができるという話も聞いた。それをインフルエンサーに宣伝させ集客をしていく。

 そういった「経験を売る」業者が、アメリカには日本以上にいるということだ。

 業者は合格者を広告塔として「この活動をアピールして大学の入試に成功しました」と宣伝をする。藁にもすがる思いの受験生の保護者たちは、「この海外ボランティアに参加すれば大学に合格できる」と思い込み、多額の費用を支払う。だが実際には、その広告塔は学校の成績や英語検定資格のスコアが高いから受かっているケースがほとんどだ。実際には活動実績はそうは関係がない。

 日本もアメリカも、難関大学に高所得層の子供が多いのは同じ理由なのだ。富裕層の子供は学力が高く、ペーパー試験に強いから受験に強いのだ。

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