“小さく安く”のお別れでも葬儀社選びは重要(写真:イメージマート)
「人々の葬儀についての関心や必要性が薄れるにつれ、葬儀や法要の簡素化が加速しています。関連業界は葬儀の新たな在り方を模索し、ニーズに合わせたサービスを開発しています」
そう語るのは、国内唯一の“終活”専門誌『月刊終活』(鎌倉新書刊)編集長の吉住哲氏だ。前身の『月刊「仏事」』から数えて創刊25年を迎えた同誌は、各地の霊園の販売状況から仏具の新商品ラインナップ、動物供養業者のビジネスレポートまで細やかな特集で業界関係者の注目を集めてきた。
なかでも強みは、発行元である鎌倉新書による全国調査だ。葬儀、墓、仏壇までテーマごとに費用相場や満足度など2000人規模のアンケートで統計を取り、誌面に活かしている。
人々の意識変化が垣間見えるのが、同社による「お葬式に関する全国調査(2024年)」だ。回答者が経験した葬儀の種類は「家族葬」(50.0%)がトップ。以下、「一般葬」(30.1%)、「一日葬」(10.2%)、「直葬・火葬式」(9.6%)が続いた。一日葬とは通夜を省き、葬式と告別式、火葬、初七日の法要までを一日で済ませる様式。直葬は通夜、告別式、読経などを省いて火葬のみを行なう。
「2015年の調査では一般葬が58.9%で、より簡素な家族葬は31.3%でした。この10年で葬儀のトレンドが完全に入れ替わりました」(鎌倉新書広報・白井夢乃氏)
葬儀の簡素化とともにコストダウンも進み、葬儀にかける費用の平均額は2015年の184万円から2024年には118.5万円まで減少した。“小さく安く”が葬儀の主流になりつつあるが、コストダウンだけを考えて選び「こんなはずではなかった」と悔やむケースも増えているという。吉住氏が語る。
「地域社会が希薄になり身近な人の葬儀に出る機会が減るなか、『葬儀にお金をかけなくてもいいのでは』という考えも増加傾向にあります。ただし、簡素な葬儀では式があっという間に終わり、『故人をしっかりと送ってあげられなかった』と後悔する声もあります」
前出の「お葬式に関する全国調査(2024年)」では、直葬の満足度は38.7%と低く、一日葬も51.0%の満足度に留まっている。世間体を気にする親族から「手抜きすぎる」「他の参列者に恥ずかしい」といったクレームが出ることも珍しくないといい、値頃だが立派に見える葬儀の在り方が求められているという。