店頭メニューに書かれる値段のありがたさ
イギリス人がフィッシュ&チップスを食べる場合、モルトビネガーがあるのが当然だと思う。しかし、日本ではアイリッシュパブはさておき、その他ではモルトビネガーがない場合も多い。あまつさえ、小麦粉の皮ではなくパン粉の皮だったりする。その時のイギリス人の落胆ぶりったらないでしょう。私の場合、ソースのないトンカツがそうだった。
この程度のことですら忘れられない思い出になるほど「食べ物の恨みは恐ろしい」わけですから、お互いの幸せのために、ぜひとも店の側は禁止事項とルールを明示してほしい。それこそ銭湯の「泥酔者・入れ墨の方入浴禁止」「湯船に入る前に体を流す」「タオルは湯船に入れない」並みに周知してほしい。特にないのであれば、何も書かないでいい。
店頭のメニューに値段を書くところもありますが、アレは実はかなり親切なんですよ。「ウチの店はカキ氷が1800円もするけどそこ、分かって入ってくださいね。後から『カキ氷のくせに高過ぎ!』とか文句言わないでね」ということを事前に告知してくれているのです。そうした情報を共有したうえで、店も、利用客も快適に飲食をしたいものです。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。