ドン・キホーテ快進撃を支える「現場主導」の経営哲学とは(時事通信フォト)
小売店の勝ち組と負け組を分けるものはなにか──。百貨店業界が苦戦にあえぐなかで、いま絶好調なのが総合ディスカウントストアチェーン「ドン・キホーテ」だ。なぜドン・キホーテは好調なのか、その背景には、従来型の小売業とは一線を画す「現場主導」の運営体制があるという。イトモス研究所所長・小倉健一氏が、その効果について検証した論文を紐解き、ドン・キホーテ快進撃の秘密を解き明かす。
現場スタッフが自らの判断で商品を選び、タイミングを見て発注
ドン・キホーテが絶好調だ。運営元のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の2025年6月期第3四半期決算では、グループ全体の売上高は1兆6888億円(前年比7.7%増)、営業利益は1287億円(同16.7%増)と、いずれも過去最高を更新。営業利益率も7.6%に達し、従来目標の5%を大きく上回った。免税品・国内商品ともに好調だった。
国内向け商品では、お米などの価格上昇や物価高を見越したまとめ買い需要が寄与。2014年3月からサービスを開始した自社発行型電子マネー「majica(マジカ)」会員のデータを活用したデジタル戦略により来店客数も伸び、majicaカード利用率は49.0%(前年より4.7ポイント増)となった。免税品は第3四半期累計で1244億円(前年比53.0%増)に達し、4月単月では168億円と過去最高。店舗ごとの柔軟な品揃えが大量購入を後押ししている。
一方、世の中の百貨店に目を向けると大苦戦していることがわかる。日本百貨店協会によると、2024年上半期の売上高は約2兆7000億円で、既存店ベースでは前年比3.1%減。5年ぶりの上半期前年割れで、主因は免税品の不振だ。円高や高額品の敬遠で3月以降4カ月連続の減収が続いている。