政局次第では株式市場に影響を与える可能性も考えられるという(石破茂・首相/時事通信フォト)
トランプ政権による関税措置について日米が合意に至り、日本への25%の関税が15%に引き下げられたことが好感され、日経平均株価は4万円台を回復したが、このまま右肩上がりの相場が続くかどうかは不透明だ。
長年にわたり「日本の配当株」をメインに投資を続け、現在は年間400万円以上の配当を受け取っている“億り人”投資家の長期株式投資氏は、今後の相場の見通しについて慎重な見解を示す。
「相場観としては、関税交渉の合意が発表される前まではおおむね妥当な水準かなと思っていたのですが、『15%』という数字のインパクトによって急騰し、その後は全体的にやや割高に動きつつある印象です。今後、この状態からさらに上値を追っていくには別の大きな材料が必要ですが、目先にそのような材料は見当たりません。
したがって、年末までのスパンで相場が上がる確率と下がる確率のどちらが高いかと問われれば、下がる確率の方がやや高いと思います。いまは割高になっていますが、そのうち妥当な水準に戻っていくので、その過程で全体的に下がっていくという見方です」
7月20日投開票の参院選では自民党が大敗。衆参両院で少数与党となり、石破政権は厳しい国会運営を迫られることになった。自民党内からも石破茂首相の退陣を求める声が高まっており、野党が結束すれば政権交代の可能性もある。政局の混沌は相場にどのような影響を及ぼすのか。
「政局次第では株式市場に影響を与えることも充分考えられる。もし仮に石破茂・首相が退陣して、新政権が景気の良い政策を打ち出したら株価が上がる可能性もあると思いますし、その逆のパターンもあり得るでしょう」
「15%関税」を織り込んで業績修正する企業に注目
日本の上場企業は3月期決算が多く、5月にこぞって本決算(1会計年度の決算)を発表したが、その段階では日米の関税交渉がどうなるか不透明だった。長期株式投資氏は「今後は15%関税の影響が反映された決算発表を注視する必要がある」と語る。
「5月の決算発表では、その時点で出ていた情報をもとに関税の影響が織り込まれていたり、あるいは予測がつかないということで織り込まれていなかったり、企業によって今期の業績予想の出し方はまちまちでした。
それが、『15%』という数字が確定したことで、上方修正などのポジティブな発表をする企業も出てくるでしょうし、そうなると株価の上昇も期待できます。各企業が15%関税の影響を踏まえた数字や見解などを提示すると思いますので、それを見て投資の判断をするというのもひとつの手だと思います」