12年で39冊になったsatoさんの「投資ノート」
元手95万円から始めた株式投資により、12年で資産を2億円まで増やし、41歳でFIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現した元レスキュー隊の“億り人”satoさん(42)。かつてはグロース投資をメインにしていたが、割安株へのバリュー投資へと投資スタイルを転換したことが大きな成功のきっかけになったという。いったいどのような投資手法なのか。satoさんが重要視している企業の資産価値の見方と銘柄選定の考え方を、現在保有する銘柄で具体的に解説してくれた。
3年で株価が2.5倍になった“風邪を引いた優良銘柄”
「自動車用コントロールケーブルのメーカーであるハイレックスコーポレーション(東証スタンダード・7279)は、2022年9月から買い始めて現在も保有しています。平均取得価格は1049円で、直近の株価が2500円前後ですから3年足らずで約2.5倍になりました」(以下、「」内はsatoさんのコメント)
買い始めた当時は世界的な半導体不足という状況で、業績が悪化して赤字に転落。株価は低迷していたという。
「その株価が会社の価値を正しく反映しているとは思えませんでした。当時の同社の時価総額393億円に対して、有価証券などの『現金同等物』から全負債を差し引いても、600億円も保有していました。理論的には、この銘柄を取得した瞬間に儲かることが確定します。資産価値の面から考えると『負ける理由がない銘柄』だったのです。この資産状況を見て、やがて半導体不足が解消されれば業績は回復し、株価は上昇すると思えたのです。僕に言わせれば、一時的に株価が下がっているだけの“風邪を引いた優良銘柄”でした」
satoさんの見立て通り、その後、2024年10月期の営業利益、当期利益はともに黒字に転換、業績は回復して株価も上昇した。
「一方で強い追い風も吹きました。2023年3月、東京証券取引所が『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』を要請したことで、企業はPBR(株価純資産倍率)を上げるなど、株主還元策を求められました。
ハイレックスコーポレーションもPBRが低く、PBRを上げるためにはROE(自己資本利益率)を上げる必要があったのですが、資産が多すぎてROEが上がらない。しかも、保有している有価証券の株価が上昇して、ますますROEが上がりにくくなっていました。僕が気づいたくらいですから、モノ言う株主=アクティビストたちが黙って見ているはずがありません。2024年10月から大株主として彼らの名前が表に出るようになり、さらに株主還元への圧力が強まりました」
今年6月から株価は急騰し、7月には2500円を突破。satoさんは、約3分の1を売却して利益を確定したという。