老後資産を枯渇させないためにどうするか(写真:イメージマート)
終活の重要性が説かれて久しいが、タイミングを見極めるのは難しい。都内在住の主婦(65)は、夫が50代後半の時に子供が独立したこともあり住宅ローンの繰り上げ返済を始めた。だがその後、夫はがんを患い計画が大きく狂ったと話す。
「年金生活が始まる前に退職金も使って住宅ローンを完済すれば老後は楽だと考えたのですが、夫はがんで年金受給前に亡くなりました。繰り上げ返済をしなければ、死亡でローンが免除される団信(団体信用生命保険)もあるし、夫の退職金を使う必要もなかった」
終活に詳しいファイナンシャルプランナーの大割克美氏が言う。
「50代は子育てのひと区切りがつく半面、老後への焦りが生じて不安を抱えやすい年代です。将来への不安から無理に繰り上げ返済して手持ちの現金を減らしたうえ、返済後に急逝し、本来なら団信で賄えるはずの残債が丸々払い損になるケースは少なくありません。繰り上げずにそのまま払い続けるのが賢明です」
60代になると退職と年金受給開始という大きなライフイベントが待っている。だがその先の判断を誤ると、老後に暗雲が立ち込める。
60歳で定年を迎えた都内在住の男性は会社から再雇用を打診されたが、完全リタイアを選んだ。2~3年は退職金と貯蓄で暮らし、困ったらまた働けばいいと考えていたが実際に住宅ローンの支払いや浪費で貯蓄が減ってきたため、再就職を試みるも軒並み門前払いとなった。高齢者を支援する一般社団法人LMN代表理事の遠藤英樹氏が語る。
「60代は貴重な時間でこの間に体力や気力、認知能力が低下して働けなくなる人が少なくない。すると蓄えを取り崩す時期が前倒しになり、老後資産が先細りします。働けるうちは働くことをお勧めします」