出資者たちのショックは大きい(イメージ)
高利回りを謳い、個人投資家から巨額の出資金を集めた不動産投資商品「みんなで大家さん」。配当が2か月連続でストップし、出資者たちの不安と怒りがピークに達し、出資金の返還訴訟の動きも始まっている。
共生バンクグループがその中核である「みんなで大家さん販売」を窓口にして全国の投資家からかき集めた出資金は、2000億円を超える。うち問題となっている投資対象事業「共生日本ゲートウェイ成田」プロジェクト(PJ)の投資額は、1500億円超と75%を占める。その配当がすべて止まったのだ。北九州市選出の代議士・緒方林太郎氏は、いち早く共生バンクグループの事業を問題視して国会でも追及してきた。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)【全3回の第3回】
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緒方はここから成田PJを調べ始め、数年来、国会でもファンドや法律を所管する国交大臣に質問してきた。挙句、今度のシリーズ成田の配当ストップなのである。2024年1月に4口400万円をシリーズ成田に投資した関東在住の伊東啓(仮名71歳)はこう吐き捨てる。
「これまで株はもちろん投資というものをやったことがありませんでした。でもこの成田PJについては、成田市が事業を許可し、成田国際空港が土地を提供している大がかりな計画だとわかった。資料を取り寄せましたら、この会社は過去にもいろんな不動産プロジェクトをやっていて、ほとんどの事業で配当金が滞りなく支払われている、と書かれていた。だから、安心してしまったのです」
成田PJでは成田市という行政のお墨付きに加え、共生バンクが46万ヘクタールある計画予定地の4割を成田国際空港から賃借している。空港は2004年4月に民営化されたとはいえ、日本政府が株の100%を所有し、歴代社長の多くは国交省の天下り組が占めてきた。これらが投資家たちの安心材料になってきた面は否めない。伊東が悔やむ。
「それにコロナ禍が終わってインバウンドが増えている時期だったので、波に乗るいい計画だと思い込んでしまいました。配当は2024年の5月から、7月、9月と奇数月に1回あたり3万7000円前後が振り込まれていました。今年5月までは振り込みがあったんですが、7月末になって突然謝罪メールが来ましてね。すぐにサイトで解約を申し込み、出資金を全額返してくれという旨を書いた内容証明郵便を作って送ったんですが……」
70歳を超えている伊東には年金以外の収入がない。文字通り、虎の子が目の前から消えたショックは大きい。
「400万円は退職金と年金をチマチマ貯めていた金でした。2か月に1度の3万7000円は、老後資金として、年金プラスアルファのつもりでした。今にして思えば、みんなで大家さんはずい分前から疑惑が燻っていたらしいので、もう少し調べておけばよかったと悔やまれます」
伊東はいまだ共生バンクからの返金がないので、裁判に持ち込むつもりだという。
「投資は家族にも内緒でした。本当に恥ずかしいから今でも話してないんです。仮に裁判に勝ったら、家族に『こんなことがあった』と笑い話で打ち明けられます。けれど、400万円が返って来るかどうか、不安でたまりません。だからLINEのグループチャットに入ってみんなで大家さんの被害の情報収集をしています。そのひとつには700人ほどが集まっています」
複数あるLINEのグループチャットには、さまざまな声があがっている。なかには裁判に触れた投稿も少なくない。
〈裁判で勝ってお金が戻る確率は少ないような? (会社が)破産する前に少数の人で勝訴すれば訳前が多い。って事かな?〉(原文ママ)
あるいは次のような声もある。
〈かなり前に送った内容証明は無視されたので、リンク法律事務所に電話しました。説明会に参加することに決定!〉