遅刻はゼロ、睡眠時間は平均6時間半へ
就労移行支援事業所に通い出してからも、なかなか時間通りに来ることができなかったジュンさん。彼女が工夫したことを、ご紹介しましょう。
【1】光で起きる目覚ましライトを購入
タイマーを6時にセットし、30分かけて徐々に部屋を明るくしました。
【2】夜22時にスマホを自動でグレースケール化(色をモノクロに)
グレースケール化することで目から入る情報量を減少。「脳の興奮」を抑えました。
【3】朝一番のタスクを「お気に入りのポッドキャスト再生」に設定
「起きたら楽しいことが待っている」習慣を作りました。3週間後、遅刻はゼロ。睡眠時間は平均6時間半へ。
「結局、怠けていたワケじゃなくて自分の脳の特性を知らなかっただけなんだ、とようやくわかりました」
そう微笑むジュンさんに、かつての自責の面影はなくなっていました。
昼夜逆転は、意思だけでは修正しづらいもの。光や音、また温度といった、外側からの情報を先に変えるといいでしょう。そして、いきなり生活リズムを変えようとはせず、小さな成功体験を積み重ねてください。
「月曜日だけ上手く起きられた」から始まり、「来週は3日クリア」へ。脳は“できた”記憶を頼りに、徐々に自己肯定感を高めます。
そもそも「朝型が正義」という思い込みを、手放すことも効果的です。
出社時間のスライドや在宅勤務を一部で導入することは、組織にとっても生産性を下げないどころか、質の高いアウトプットをもたらす場合が多いもの。中には、夜勤の仕事を選択することによって、自分らしい働き方を見つけた方もいます。
社会に合わせて「自分を矯正する」のではなく、自分のリズムを可視化し、環境の側を調整する。そのアプローチこそが、才能ややる気を最大限に引き出す近道なのです。
【POINT】
自分の睡眠と起床リズムを見つけ、光や音、温度など外側の情報から調整しよう
(*登場する人物の名前はすべて仮名です。個人情報保護のため、一部の属性や状況についても変更しています)
※柏本知成・著『ポストが怖くて開けられない! 発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成
■第1回記事から読む:「出された指示を忘れてしまう」ADHDの人を悩ませる困りごとの解消法を指南 整理しないで1行メモ、重要なものは文字情報で確認、独創性や集中力の高さを活かす工夫を
【プロフィール】
柏本知成(かしもと・ともなり)/1985年、愛知県生まれ。株式会社KyoMi代表取締役。山梨大学教育学部を卒業後、24歳で独立し学習塾を開業。これまでに約1000名の生徒を指導し、第一志望校合格率96.3%という高い実績を残す。2016年には国の認可を受け、障害者の社会復帰を支援する就労移行支援事業所を設立。開業から1年足らずで、支援人数・就職者数ともに愛知県内トップクラスの成果をあげる。現在は、障害者雇用に関する講演活動や、YouTubeチャンネル「発達障害しごとラボ」を通じた情報発信などを行い、「働きたいけれど働けないをゼロに」という社会の実現を目指して活動している。