イタリア語で「サラブレッド(純血種)」を意味する「Purosangue」と名付けられた。フェラーリ初の4ドアGT。新たな価値を与えられたフェラーリのGT
2022年、フェラーリ初の量産型4ドアモデルとしてベールを脱いだ「プロサングエ」。その時は「フェラーリもついに時流に勝てずSUVを投入か」などと言われながらも、その実態は安易に「フェラーリ版SUV」などと呼ぶことを決して許さない、唯一無二の存在感を放っていた。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は自動車ライター、佐藤篤司氏がフェラーリ「プロサングエ」に試乗し、“進化の度合い”を探った。
由緒正しきフェラーリならではの「新世代GT」としての提言がある
「ポルシェがSUVかよ」。2002年、ポルシェ初のSUV「カイエン」が登場したときも、今回の「プロサングエ」と同じような反応はありました。ポルシェは当時、メーカーの思惑以上にユーザーの嗜好は多様化が進み“プレミアムSUV”というマーケットにも可能性を感じ取っていました。その思いに加え、親会社のフォルクスワーゲンの“高級SUV開発”といった流れが合致したこともあり、「カイエン」はデビューを果たします。以降、カイエンはファミリー向けユーティリティに一級品のスポーツドライビングという魅力を融合させ、ブランドの屋台骨を支えるまでになりました。その間、ポルシェはカイエンを「クロスオーバーSUV」とは自称せず、あくまで「新しい形のスポーツカー」という哲学を貫いてブランドイメージを維持したのです。
古くからの名門スポーツカーブランドが、SUVなどの“ちょっと方向性が違うモデル”を出しただけで「王道ではない」などと、世間はざわつくものです。しかし、いかに名門ブランドでも既存のモデル構成だけで存続するより、カイエンの成功例を見るまでもなく、新たな可能性を求めるのは実に現実的な方法だと思います。すでに「ランボルギーニ・ウルス」、「アストンマーチンDBX」などといったモデルは“スーパーSUV”といった特別な呼び方もされ、ブランドイメージを良好な方向へ上書きすることに成功しています。
当然、“唯一無二の存在”として熱狂的な信者「フェラリスタ」に支えられているフェラーリであっても、世間の流れを読み、新たな挑戦を行うでしょう。スーパーSUVとしての新たな「プロサングエ」も、そうした流れに沿ったものでしょうが、忘れてはいけないのが『らしさの踏襲』であることは、ポルシェなどの前例を見れば分かると思います。
そして今回の“跳ね馬”の心を宿したスーパーSUV「プロサングエ」ですが、自らを「SUV」とは呼ばず、あくまでも2+2レイアウトのGTの系譜にある最新型の「4ドアスポーツカー」と定義しています。つまりポルシェ・カイエンのデビュー時と同じような主張を掲げています。
排気量6496ccのV型12気筒DOHC V型は725馬力というパワーを引き出します。フェラーリのV12気筒エンジンと言えば「フェラーリの魂を最も純粋に表現」する存在と言われています。なんとターボなどの助けを借りない自然吸気のV12エンジンで、圧倒的なパワーと官能的なサウンドを実現しています。もちろんこのエンジンスペックを特徴とするだけでも『フェラーリらしい』のです。さらに車両価格は4,766万円~。多分、そのまま購入する人はほとんどいないはずなので、色々な装備を付加すれば優に5千万円を超え、6千万以上も当たり前のフェラーリなのだ。エンジンも価格も、まさにフェラーリの特別感に溢れています。
