曖昧な“出口戦略”
柳瀬はゲートウェイ成田の計画用地の4割を成田国際空港会社(NAA)から賃借し、隣接する45.5万平米の開発を進めてきた。総額2000億円の一大開発計画である。そこに不審を抱く大阪府は共生バンクに事業内容を報告するよう要求してきたが、まともな返答がなかった。それもそのはずだ。実は柳瀬はこの時点ですでに、自力の成田プロジェクトをあきらめていたフシがある。
計画当初の柳瀬は三重県に展開中の「ともいきの国 伊勢忍者キングダム」にある城のようなホテルをはじめ、3つの高級ホテルを建設して成田に観光・インバウンド需要を取り込もうとした。いわばテーマパークのような街づくりプロジェクトを夢見てきたのだが、それを断念する。企業の研究開発施設を中心とするビジネス拠点の建設へと計画を変更した。
詳しくは稿を改めるが、柳瀬は計画変更にあたり、名だたる日本の大企業に声をかけ、企業コンソーシアムを組んでコンサルタントを依頼した。大阪府としては、当然計画変更の詳しい報告を求めたが、その事業報告も曖昧なままだ。議事録にはそのことも出てくる。柳瀬は言った。
〈マスタープランを起こすにしても(中略)かなり知見のある専門分野になる。その方々とも協議を始めている。今まさにコンサル契約の契約をしたり、そういうことをしている途中で、事業計画を今すぐ出せと言われても、頭で考えたものは出せるが、もうちょっと時間をいただきたいというのが本音である〉
要するに柳瀬は、従前の計画が立ち行かなくなったため、企業群にプロジェクトごと買ってもらおうと出口戦略を考えたのである。だが、肝心の具体的な中身についてはのらりくらりと明らかにしない。
〈出口というのは、売却もしくは資金調達によって差し替えていく形になるので、いずれにしてもこの事業というものをきっちりと構築をした上で、それであの評価に出さないといけない〉
議事録はこう続く。
〈(事業)評価を出して、初めて金融機関とか、ファンドとか乗ってくることになる。昨年(2022年)の8月から「人」を集めて収益をあげるのではなく、「物」でいくということで、マスタープラン(の完成)を(2023年)1月末目標としていたが、NAA(成田国際空港)からの話もあって止められている状況であり……〉
その計画変更は議事録から1年あまり経た昨年5月9日に発表された。新たにラスベガスのそれを模した巨大アリーナ「デジドーム」の建設をぶち上げ、食品加工センターをつくるという。先の企業コンソーシアムとともに計画を見直し、2025年秋に着工、2027年3月のオープンを目指すと謳った。ところが、その前に資金繰りに行き詰まっているのである。