脳の疲労の予兆は「眠気」
多忙感は、3つの段階を経て強まります。段階が進むほど、多忙感の発生を防ぐのが難しくなります。ここでは、多忙感の3つの段階を知り、できるだけ早く対処することの重要性を理解してください。
多忙感の入り口である脳の疲労は、どうやって見つければよいでしょうか?それは、「眠気」に着目すればよいのです。
脳は、疲労すると眠気を引き起こして神経を休ませようとします。この時点では、ぼんやりする程度の眠気で、居眠りしてしまうほどではありません。この眠気には、おそらく抗うでしょう。まだ作業の途中ですし、仕事中なら周囲の目もあるので、作業を始めていきなり休憩するというのも気が引けます。
眠気に抗ったところから、ステージ1が始まります。
ステージ1:ソワソワ
眠気に抗うと、脳の中では「ノルアドレナリン」という興奮物質が増えます。これは「警戒ホルモン」とも呼ばれ、心拍数や血圧を上げて、体を戦闘モードにするもの。
たとえば、眠気に抗うために無意識にスマホを見たらノルアドレナリンが増えて、スマホを見終わってもノルアドレナリンは脳内に残ります。ノルアドレナリンが残っていると気分が落ち着かず、なんとなくソワソワ。
普段なら受け流せる音や人の仕草に敏感に反応してしまいます。たとえば、他人の貧乏ゆすり、店内のBGM、レジの自動音声。五感がアンテナのように立って、不快に感じるのです。
ここで私たちは不可解な行動をとります。それは、自分から刺激を探してしまうこと。急なメールやチャットに集中して返信したあと、本当なら休めるはずなのに「またスマホを開いてしまう」。
これは、脳内に残ったノルアドレナリンが「用事を探せ」と背中を押しているからです。
ステージ2:イライラ
ソワソワした状態で作業をしているとき、同僚から急に声をかけられる。メールの返信を催促される。こうした横やりが入る、つまり外乱が加わると、体内で「グルココルチコイド」というホルモンが分泌されます。
こうなると、ちょっとしたことでイライラしやすくなります。
「今集中していたのに」
「あの人はいつもタイミングが悪い」
そんなことを思うようになったら、ステージ2に到達しています。グルココルチコイドは、もともと体の炎症を抑えたり、病原菌と戦うためにタンパク質を壊して非常用エネルギー(ブドウ糖)を作ったりする役割を持っています。
彼らがせっせと働いた結果、筋肉や粘膜など体を作るタンパク質が壊され、無理やりブドウ糖に変換される。非常時でもないのにエネルギーを作るために体が壊されるのです。
これが続けば、筋肉がやせる、胃が荒れる、歯の治りが遅くなるなど、単なる「イライラ」が、体のあちこちを消耗させていきます。