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《『定年後』著者・楠木新氏が説く“人生の最後10年との向き合い方”》大切なのは「人間関係の確保と再構築」、重視すべきは「素の自分でいられること」

やりきる幸せ

 楠木氏は人間には5つの寿命があると説く。「ホントの寿命」「健康寿命」「労働寿命」「資産寿命」「人間関係寿命」だ。それぞれの寿命をうまくコントロールして生きることが人生の終盤には重要だという。

「ホントの寿命とは生物としての寿命です。たとえば75歳時点での平均余命は男性で約12年です。この期間を誰とどのように過ごすのか、これは避けがたいテーマです」

 会社員であれば仕事を通して人間関係を作ることができる。しかし、定年後はそうはいかない。

「82歳の先輩がある時“同期の3分の1はもう亡くなりました。人とのつながりが減るというのが、老いるということです”と言うのを聞いてハッとしました。人間関係寿命が尽きるとは、記憶を共有できる人が誰もいなくなることで、これはとても辛い。人間関係を確保、再構築することが大切です」(同前)

 新たな人間関係を築く際のポイントは“素の自分でいられること”だと楠木氏。

「定年後10年もすればほとんどの人は会社の同僚と会わなくなるし、仕事の話もしなくなる。仕事でできた関係は実はそれほど長く続かないのです。それよりも素の自分で付き合える人間関係のほうが重要。同窓会に参加して旧交を温めるのもいいですが、結局、同年代だけの付き合いになりがちです」

 できれば世代を超えた友人を作ることが大切だという。

「地域の講座などに参加すれば様々な世代の人が集まります。参加する場合は途中参加ではなく、受講生全員がイチからスタートするものを選ぶといいでしょう。同時にスタートすれば人との結びつきを育みやすい」(同前)

 * * *
 マネーポストWEBの関連記事《ベストセラー『定年後』著者・楠木新氏が説く“老後の豊かな生き方” 人生の終盤戦で重要な「5つの寿命」と、ズボラでもできる財産管理法》では、楠木新氏が説く定年後の上手な生き方について詳細に紹介している。

【プロフィール】
楠木新(くすのき・あらた)/1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。2015年に定年退職。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。著書に『定年後』『定年準備』『転身力』(中公新書)、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『75歳からの生き方ノート』(小学館)、『定年後の居場所』(朝日新書)など多数。

※週刊ポスト2025年12月19日号

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