自分たちのルールに縛られて自滅する日本
一方で、日本の現状はあまりにも対照的だ。日本には、中国のような大規模なエネルギー網も、他国を出し抜く交渉力も欠けている。深刻なのは、国内にある貴重なエネルギー源である原子力発電を、自分たちの手で縛り付けている事実だ。原子力規制委員会が設けているルールは、あまりに厳しく、時代遅れである。
日本には33基の原子炉があるが、実際に動いているのは15基に過ぎない。安全を盾にした手続きや、厳しい規制のせいで、再稼働は何度も延期されている。世界最大級の柏崎刈羽原発も動かすことができず、日本は高いお金を払って海外から燃料を買わされ続けている。習主席が他国の弱みを利用して利益を上げている一方で、日本は自分たちのルールに縛られて自滅しているように映る。規制を守ることは大切だが、国民の生活や国の力を守ることを忘れた規制は、ただの足かせでしかないのではないか。
習主席のやり方は、確かにお行儀が良いとは言えない。弱っている国から安く買い、困っている国に高く売る姿勢は、国際社会においてずる賢く見える。しかし、習主席は、国を強くするためには綺麗事だけでは済まないことを熟知している。他国を出し抜き、自分たちだけが豊かになる道を選ぶ。習主席の冷徹な知略は、国際社会の厳しい現実を映し出している。
日本は、習近平主席のずるさを批判するだけで終わってはならない。いや、むしろお手本の一つとして、競争社会に勝ち抜かねばならない。
世界は、力と知恵、そして時として卑怯なまでの戦略が渦巻く場所だ。エネルギーを制する者が世界を制するという現実の中で、日本はいつまで古い規制に執着し続けるのか。習近平国家主席が見せつける利益追求から、日本は目を逸らしてはならない。国を守るとはどういうことか、習主席の振る舞いは、日本に重い問いを突きつけている。
【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。