池上彰氏(左)と佐藤優氏(右)が緊迫の中東情勢を読み解く
「トランプの戦争」によって中東情勢は大混乱に陥り、すでに空前の原油高が日本経済を直撃している。米国のトランプ大統領の強硬姿勢の背後には何があって、今後どのような展開が待つと考えられるのか。勢力図が激変する世界で、日本はどう生き残っていけばいいのか。ジャーナリストの池上彰氏と、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が語り尽くす。【全文】
イランの国家体制はすでに崩壊過程へ
モジタバ師(写真/共同通信社)
池上:イランによるホルムズ海峡封鎖で原油価格が記録的に跳ね上がっています。米国とイスラエルの圧倒的な軍事力を前に、イランは“窮鼠(きゅうそ)猫を噛む”ような格好で「貧者の武器」に手を出してしまった。ガソリン高を煽って11月に控える米国の中間選挙で共和党を不利な立場に追い込む意図でしょうが、反撃になっていると言えますかね。
佐藤:実に筋が悪いカードです。おっしゃる通りイランは窮鼠だけど、司令塔が損なわれたまま暴れている感じです。
池上:というと?
佐藤:私は、イランの国家体制はすでに崩壊過程に入っていると見ています。死亡したハメネイ師の後継として最高指導者に就いた次男のモジタバ師を取り上げて「統一的な新体制ができた」とする見方は現実とズレていると感じる。
その証拠は、モジタバ師が3月12日に発表した最初の声明にあります。後継選出について、真実ではないでしょうが「国営放送で初めて知った」と書いていた。自分は神意によって選ばれ、イランは神聖国家であるとする一方、専制でなく国民に支えられた共和制だと強調しているのです。
池上:矛盾して聞こえますね。

