関西では遺骨の貴金属を公的手続きに基づいて売却
それでは、なぜ関西では遺骨の一部しか持ち帰らないのでしょうか。
歴史をさかのぼれば、そもそも江戸時代は「土葬」が中心でした。それが仏教の普及とともに火葬が取り入れられ、明治政府は明治6年に煙や悪臭が出るという理由で火葬を禁止したものの、明治8年に解禁したことで、一気に火葬が普及します。その際、政府は火葬場と墓地の機能を分けるよう通達を出しました。
となれば、遺骨は「全て」骨壺に入れ、火葬場から離れた墓地まで運ぶ必要があります。ただし、政府のお膝元である東京の火葬場はこの通達に従ったのですが、大阪では寺院が墓地の敷地内で火葬場も運営しているケースが多く、火葬した遺骨の大部分はその場で墓地に埋め、残りを供養のために持ち帰ったのです。この東西の習慣が、現在も受け継がれているという説が有力です。
そんな関西では、火葬後に残った金歯などの貴金属が盗まれるという噂がまことしやかに語られることがあります。しかし「盗まれている」は正確な表現ではなく、残った遺骨に含まれる貴金属を公的手続きに基づいて売却しているのが実態です。とはいえ元は故人のものですから、感情的に納得できない遺族はいるでしょう。遺骨の大部分を置いてくる習慣と相まって、そんな噂が生まれたのかもしれません。
関西方式を選べるサービスも
さてAさんのように、関東で火葬して関西で遺骨をお墓に入れたい、というケースは当然起こり得ます。「こんなはずでは」という事態を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。
先ほど関東は「全部拾骨」が一般的としましたが、東京23区の火葬件数の約7割を担う火葬場運営会社・東京博善では、2022年から有料で関西方式の“一部の遺骨だけを引き取る”拾骨を選べるようになっているほか、粉骨サービスを用意しています。こちらは遺骨を砕いてパウダー状にすることで、かさを3分の1程度に減らす方法。骨壺は粉骨した遺骨の量に合わせて、コンパクトなものを選ぶとよいでしょう。
いずれにせよ、火葬拾骨をする地域とお墓がある地域が別の方は、事前に葬儀屋さんに相談しておくのがおすすめです。
後編では、火葬場によってここまで違うのかと驚く、遺骨の“仕上がり”の差について解説します。
▼▼▼後編記事▼▼▼
【つづきを読む→】「霊柩車に入れる向きは」「なぜ骨の残り方が違うの」「喉仏は必ず残るのか」…疑問に回答
【プロフィール】
赤城啓昭(あかぎ・ひろあき):1級葬祭ディレクター。葬儀業界歴約30年。運営する「考える葬儀屋さんのブログ」は月間45万PVを達成し、ライブドアブログ OF THE YEARを受賞。近著に『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』。テレビ、新聞、雑誌、YouTubeなどでも葬儀現場の正しい情報をわかりやすく発信中。
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