葬儀社側の認識の甘さ
このようにお葬式の写真や動画は本来、慎重に扱うべきものです。それにもかかわらず、葬儀社側の認識は甘いままです。
葬儀業界には、インターネットを含め情報の発信に不慣れな会社が多い印象があります。待ちの営業でも、継続的に仕事が入ってきた時代が長く続いたせいでしょう。
お葬式の担当を持つと、故人の死因、職業、家族構成、人間関係といった遺族に関する個人情報のかなりの部分を把握できます。個人情報保護の管理体制について基準を満たしている事業者に与えられる「プライバシーマーク」を取得するなど、情報管理を厳格に行っている葬儀社は極めて一部です。とはいえ、さすがに顧客のお葬式の画像を、勝手にネットに上げてはいけないという暗黙の了解はありました。
ところが最近、実際のお葬式動画を編集し、キャプションを付け「感動映像」としてYouTubeやSNS動画に投稿することで、再生数を稼ぐケースが目につきます。葬儀社の効果的な宣伝ツールになっているのです。
葬儀社間の競争が激しくなるなかで「背に腹は替えられない」と、なりふり構わない宣伝手法に走る葬儀社が増えても不思議はありません。
実際、今回の炎上を起こした葬儀社の回答には、他社がやっているから、自分たちもやったといった趣旨の理屈が述べられていたそうです。もちろん、「遺族の許可をもらっていれば大丈夫」という反論はあるでしょう。しかし映り込む可能性のある参列者を含む全員から承諾を得ないと厳密にはクリアできない問題です。あわただしいお葬式の現場で、それが簡単にできることだとは思えません。
なお、当該葬儀社は、SNSに〈56才、早すぎるよ〉とか、〈仕事でも悲しすぎます(泣)30歳という若さで逝ってしまうなんて。臨月のお腹の赤ちゃんは? 掛ける言葉もない!〉などといったコメントをつけた投稿をしていることも確認されています。
言葉を失うくらいの不幸な境遇の遺族には、数年葬儀屋をやっていれば何度も遭遇します。そんな絶望的な状況で葬儀社がやるべきことは、遺族のために誠実にお葬式を行うことです。商売のために「泣ける」感動ポルノをSNSに投稿することではありません。それなのに、それが分からない葬儀社が増えているというのが実感です。
【プロフィール】
赤城啓昭(あかぎ・ひろあき):1級葬祭ディレクター。葬儀業界歴約30年。運営する「考える葬儀屋さんのブログ」は月間45万PVを達成し、ライブドアブログ OF THE YEARを受賞。近著に『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』。テレビ、新聞、雑誌、YouTubeなどでも葬儀現場の正しい情報をわかりやすく発信中。
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YouTube:https://www.youtube.com/@kangaerusougiyasan