ユーザー増の好循環を生み出す「ネットワーク効果」の威力(写真:イメージマート)
決算は赤字でも売上高が伸びている企業の中には、「時間軸」を長く取り、利益の最大化を目指す会社もある。第1~2回ではSaaSビジネス「freee」を展開するフリー株式会社を例にその経営戦略を解説した。第3回では、SaaS以外の長期で利益最大化を目指すビジネスモデルと、近年注目を集める指標「LTV」と「CAC」について紹介する。【全3回の第3回。第1回から読む】
※若手会社員・一ノ瀬君との会話形式で構成される「妄想する決算」氏の新著『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』(高橋書店)より一部抜粋して再構成
メルカリやLINEは「ネットワーク効果」がはたらくビジネス
妄想さん:ほかにも、長期利益の最大化を理由に、赤字で販売が容認されるケースはいくつかあります。たとえば「ネットワーク効果」がはたらくビジネスがその1つです。ネットワーク効果とはユーザー数の増加がサービスの利便性を高め、さらなるユーザーを呼び込む効果のことです。かんたんに言うと、使う人が増えれば増えるほど、サービス自体の価値が上がるという状態です。
一ノ瀬君:利用者が少ないと価値が出しにくいのか。たとえばどんなもの?
妄想さん:メルカリのようなフリマアプリでは、出品者から見るとユーザー数が多いほど商品が売れやすく、購入者から見るとユーザー数が多いほど品ぞろえが豊富で便利です。つまり、出品者も購入者もユーザー数の多いサービスを利用するわけですから、ユーザーが増加すればするほど、それがさらなるユーザーの増加につながるという好循環を生み出すので、最終的には1強状態になりやすいです。
一ノ瀬君:それはそうだね。LINEとかもそうかも。
妄想さん:ネットワーク効果がはたらくビジネスでは、サービス開始当初は大きな赤字となっても広告費にお金をかけ、ユーザーを獲得することが重要となります。
一ノ瀬君:メルカリが最初赤字だったって話は聞いたことあるな。
妄想さん:実際にメルカリの業績の推移を見てみると、2022年6月期までは数十億円~100億円を超えるような営業赤字の傾向が続いていましたが、近年は100億円を超える営業利益を出せるようになっています。
メルカリの売上高の推移(『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』より)
メルカリの営業利益の推移(『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』より)
妄想さん:メルカリ上での流通取引総額(GMV)は1兆1209億円、月間アクティブユーザー数(MAU)は2304万人まで成長しています。完全に1強状態で大きな利益を出す事業となっていることがわかると思います。
メルカリのGMV(流通取引総額)とMAU(月間アクティブユーザー数)の推移(『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』より)
一ノ瀬君:なるほど、競争に負けるとサービスが使われなくなるけど、勝つとメルカリみたいに1強になれるから、まずは競争に勝つことが重視されるわけね。
妄想さん:SaaSもネットワーク効果も、本質はビジネスモデルから考えた利益最大化のための時間軸の話です。ほかにも同じようにビジネスモデルと時間軸の関係から、赤字や低採算でも売上拡大を進めている企業は多数あるので、この点は意識して考えてみましょう。
一ノ瀬君:決算書だけを見たら赤字でも、そのビジネスモデルと時間軸の関係を考えると、その企業の戦略と未来が見えてくるってことだね。



