暑い季節は特にこのシャリキンがたまらないのだ
なめろうって何よ?
坪内さんと出会った店で、坪内さんを読もうと1冊持参してきたが、隣のテーブルが賑やかで、とても本など読めない。そこで思い出の酒でもあるキンミヤ焼酎をもらうことにした。アルミパックごと凍らせてあるシャリキンがあった。今度は、飲み方わかりますか、とは訊かれなかった。
そこへ鯵のなめろうが運ばれてきた。見れば隣の兄さんたちのテーブルにも、なめろうが出ていた。私はここで、また度肝を抜かれることになった。
一人の兄さんがこう言いながら箸を伸ばしたのだ。
「これがなめろう? なめろうって何よ」
兄さん、なめろうを知らんのか! 驚愕する私の耳に、ひと口食べた兄さんの衝撃のひと言が飛び込んできた。
これがなめろう。当然のことながらうまい
「なにこれ、ユッケみたいじゃん。うめえ! え? これ、何味?」
味噌だよ、味噌! よく覚えておけよ。なめろうのうまさを知ったならば、今日が君の人生の変わり目だ。
私は、あきれ半分だが、どこか嬉しくもあった。気のいい兄さんが、房総の漁師料理であるなめろうのうまさを知ってくれたのだ。それだけで嬉しいし、亡くなった女将さんも喜んでいることだろう。私は、ジョッキの中で溶けていくキンミヤのハイサワー割りを、またひと口ぐびりと飲むのだった。
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