業績予想の上方修正で株価が急騰したフジクラ(時事通信フォト)
フジクラ(5803)は6月18日、2027年3月期の業績予想を大幅に上方修正し、翌19日の東京市場ではストップ高まで買われた。わずか1カ月前には、前期の好決算にもかかわらず今期の減益見通しが嫌気され、株価は急落していた。今回、マーケットの見方は何が変わったのか。また、フジクラのストップ高を演出した要因を追い風に、「連れ高」が期待できる他の銘柄はなにか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
目次
熱狂と混乱の渦中にあるフジクラ株
フジクラ(5803)が6月18日に大幅上方修正を発表した。同社は世界の通信インフラを根底から支える日本屈指の電線メーカーであり、株式市場において熱狂と混乱の渦中にある銘柄といえる。
昨今の生成AIの爆発的な普及に伴い、データセンター向けの高密度光ファイバケーブルの需要が急増しており、同社はその特需を享受する銘柄として投資家の注目を集めてきた。株価は2024年2月にはPER(株価収益率)7倍、PBR(株価純資産倍率)1倍の割安水準から、2026年5月の決算前にはPER67倍、PBR18倍にまで高騰していた。ところが、その後の決算で株価は約半分になるという、短期間で歴史的な急騰と暴落を演じている最中である。今回は同社のファンダメンタルズ、バリュエーション、そして直近の劇的な業績修正劇を解剖し、AI関連セクター全体の景況感に与えるインプリケーションを考察する。
まず、同社の驚異的な成長力を見せつけたのが、2026年5月14日に発表された2026年3月期の決算(連結)である。この直近決算に示された成長実績は、まさに桁外れであった。売上高は前年比20.7%増の1兆1823億円、営業利益は同39.2%増の1887億円に達し、最終的な親会社株主に帰属する当期純利益に至っては同72.5%増の1571億円という大幅な増益を記録した。
この業績拡大の最大の牽引役となったのは、売上高が前年度比44.7%増、営業利益が同65.7%増となった情報通信事業部門である。生成AIの普及を背景とした北米市場を中心とするハイパースケールデータセンター向けの需要が爆増し、同社の戦略商品である細径高密度光ファイバケーブル(SWR/WTC)の出荷が飛躍的に伸びた結果である。しかし、この成長が発表された直後、フジクラの株価は投資家の投げ売りを浴びて大暴落を引き起こす。
暴落の引き金となった保守的な会社見通し
その暴落の直接的な引き金となったのは、同時に発表された2027年3月期の通期連結業績予想であった。会社側は、売上高こそ前年度比5.1%増の1兆2430億円を見込んだものの、純利益については同0.7%減の1,560億円という、減益ガイダンスを提示した。
会社側はその理由として、情報通信事業における光ケーブルの急激な増産により、水素など一部の原材料調達が追いつかなくなる懸念や、ホルムズ海峡封鎖による物流停滞、サプライチェーンの混乱リスクなどを挙げ、極めて保守的な見通しを立てた。しかし、株価がAI特需を先取りして高値圏にある中、市場にとって保守的な決算見通しは失望売りの原因としては十分であり、成長の鈍化を危惧した売りが殺到し、株価はストップ安水準にまで売られた。
このパニック的な売りの背景には、短期間での極度に切り上がっていたバリュエーションの重圧が存在する。前述した通り、株価が約2年で25倍以上にまで急騰したのは、ひとえに将来のAI特需による長期的な大幅成長への期待があったからといえる。それゆえに、通期見通しの物足りなさ、そして、わずか0.7%とはいえ減益を予想するガイダンスは、高すぎるバリュエーションを正当化できず、激しい株価調整を余儀なくされうる決算であったといえる。
株価が低迷する中、会社側は次なる成長への道筋を明確に示す行動に出る。フジクラは、2026年5月に「2028年中期経営計画」を発表した。この中期経営計画は2029年3月期を最終年度とする3か年の計画であり、これまでの「守りの選択と集中」から「攻めの選択と集中」へと舵を切る強力なメッセージが込められていた。
今後の展望として、「情報インフラ」「情報ストレージ」「情報端末」の3分野へ経営リソースを重点配分する方針が掲げられた。具体的には、世界的に拡大する生成AIインフラ基盤の構築に貢献するため、2026年3月に日米で合計最大3000億円という巨額の設備投資を行い、光ファイバケーブルの生産能力を現状の最大3倍に拡大する方針を決定している。また、エレクトロニクス事業と自動車事業を統合して新たなシナジーを創出し、次世代車やAIロボット向けの情報端末分野へも攻勢をかける構えだ。しかし、このような長期ビジョンが示されてもなお、市場の不安を即座に払拭することはできなかった。
