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ビジネス

東京の「火葬料金高騰」を生んだ“独占の構図”は東京博善が米系ファンドに転売されても変わらない 東京都・23区長による法整備の要望を押し戻すだけの厚労省の姿勢

東京都と23区長が要望する墓埋法改正への厚労省の対応

 こうした事態に、自治体はもはや手をこまねいていられなくなった。

 6月4日、東京都と23区長で構成する特別区長会は連名で、厚生労働省に墓埋法改正を要望している。要望書が求めたのは、単なるアドバイス、すなわちソフトローではない。「民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与」を可能にする法整備、つまりハードローである。東京博善のような独占的インフラ企業がKKRなど外資系ファンドへ転売されたり、過度な営利目的で料金を急騰させたりした際に、国や自治体が法的根拠を持って事業者を指導・監督し、必要なら介入できるルールを作れ、というのだ。これこそ厚労省が本来果たすべき役割だと、地方は突きつけている。

 最低限のルールすら整えず、すべてを自治体の自治事務に押し返す姿勢は、所管官庁の怠慢にほかならない。私は、地域社会の信頼を長く担ってきた由緒ある寺社に、小型の火葬場開設を認可する規制緩和を、一刻も早く始めるべきだと考える。火葬はもともと宗教と切り離せない営みであり、信頼に足る神社仏閣ほどこの事業の担い手にふさわしい主体はない。1施設でも2施設でも独立した供給者が現れれば、東京博善の独占は崩れ、価格は競争によって自ずと下がる。新たな公営火葬場の用地確保と住民合意には十数年かかるが、既存の境内を活用すればその時間は劇的に短縮できる。

 それでも国は動かない。4月10日の衆議院厚生労働委員会において、墓埋法を所管する厚生労働省の健康・生活衛生局長は、火葬料金の指導は「都道府県知事等の自治事務」だと述べ、第一義的な責任を地方自治体へ丸投げした。自由経済下におけるマネーゲーム自体は否定しないが、極めて公益性の高い独占的インフラが孕むリスクに対し、国が主導して最低限の防衛ルールを整備しないのは異常である。

 厚労省が対策の実績としてアピールしたのは、2025年10月に出した「技術的助言」という名の通知1枚にすぎない。外資参入などの新たな脅威に対して法的拘束力を持たない通知でお茶を濁し、抜本的な法改正(ハードローの整備)から逃げ続けているのだ。なお、事態の深刻さを示す発言として「御遺体を管理される、保管される、また搬送するような事業者についての規定は何もなく、誰でもできる、参入できる状態にございます」というものがある。これは国会において制度の構造的欠陥を厳しく突いた山本香苗議員の指摘なのだが、厚労省はこの立法府からの声すらも黙殺している。規定がなく誰でも参入できるという無法地帯を放置している以上、厚労省がやるべきことは決まっている。

 厚労省のサボタージュで時間を費やしている間に、東京の火葬場は中国資本に値を吊り上げられ、米系ファンドへ転売されようとしている。厚労省が今日も動かないその一日が、遺族の負担をまた重くしている。

【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。

次のページ:【画像】東京都・23区長による法整備の要望書

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