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ビジネス

東京の「火葬料金高騰」を生んだ“独占の構図”は東京博善が米系ファンドに転売されても変わらない 東京都・23区長による法整備の要望を押し戻すだけの厚労省の姿勢

東京の火葬料金の高騰に歯止めをかけることはできるのか(写真:イメージマート)

東京の火葬料金の高騰に歯止めをかけることはできるのか(写真:イメージマート)

 全国の火葬場の多くは自治体が運営するものだが、東京23区内においては話は異なる。区内9つの火葬場のうち、7つが民営で、そのうち6つが東京博善によって運営されている。23区のシェア70%を占めるというが、それによって市場の競争原理が働かなくなる点を問題視する声も出ている。だが、「より根深い問題は、厚生労働省の姿勢にある」と指摘するのは、イトモス研究所所長・小倉健一氏だ。いったいどういうことか、小倉氏がレポートする。

買い手が米系ファンドに移っても独占の構図は変わらない

 誰しも死は、突然やってくる。葬儀の価格を交渉する時間も、業者を選び直す余裕も、遺族にはほとんどない。そうした前提があるうえで、東京の火葬という最も根源的なインフラが、いま中国資本が独占的に支配し、値を吊り上げられ、国際的な資本のゲーム盤の上に置かれているように見える。

 東京23区にある9つの火葬場のうち、7つが民営である。全国の火葬場の大半が自治体による公営施設であることを思えば、この一点だけでも東京の状況が特殊なことがわかる。そして7施設のうち6施設、町屋、落合、代々幡、桐ヶ谷、四ツ木、堀ノ内を握るのが東証プライム上場・広済堂ホールディングスの完全子会社、東京博善である。1921年の設立以来、年間およそ7万件の火葬を扱い、23区のシェアの約70%を占める。誰も新規参入できず、誰も逃げられない。これは事実上の独占と言っていいだろう。

 民間企業が利益を追うこと自体は、何ら悪ではない。市場経済において、需要のある事業から正当な対価を得るのは当たり前の営みだ。問題はそこではない。

 新規の火葬場建設が近隣住民の反対で事実上不可能であるために、競争が完全に封じられているという一点にある。競争が働く市場であれば、ある業者が52%もの値上げに踏み切った瞬間、客は別の業者へ流れ、価格は是正される。だが東京にはその逃げ道がない。規制が築いた高い壁の内側で、独占という地位そのものが有無を言わさぬ値上げを可能にしているのだ。

 その独占の鍵を握ったのが、中国・上海出身の実業家、羅怡文氏である。免税店大手ラオックスの買収で知られる同氏は、2022年1月までに広済堂HDの持ち株比率を40%超に引き上げて筆頭株主となり、いまや会長兼CEOと東京博善の役員を兼ねる。羅氏の経営下で何が起きたか。

 2020年まで6万円を下回っていた火葬料金は、2024年6月以降、ベース料金で9万円に達した。わずか4年で約52%の値上げだ。代々幡斎場の上位プランでは14万1870円に至る。羅氏の真の狙いが、土葬から火葬への政策転換を進める数兆円規模の中国市場へ、東京博善が100年かけて磨いた火葬技術を持ち出すことにあるという見立てもある。

 東京博善側は「中国資本の影響は受けていない」と主張するが、要人の葬儀情報や遺族の個人情報が誰の手に渡るのかという経済安全保障上の不安は、その一言では消えない。日本人の弔いの場が、外国資本の国家戦略の駒にされかねない。これは座視できない事態だ。

 そして2026年5月21日、事態は新たな局面へ進む。経済情報誌『FACTA』が、広済堂HDが東京博善を売却する意向を固めたとスクープした。買い手候補に挙がったのは米大手ファンドKKR、想定買収額は1500億円から1800億円。報道を受け、広済堂HDの株価は一時ストップ高をつけた。

 資産が高値で取引されること自体を問題視するつもりはない。だが、中国資本が規制の壁に守られた独占を使って企業価値を吊り上げ、規制が及ぶ前に最高値で売り抜ける──この構図は、健全な市場の競争ではなく、規制が生んだ歪みの上に咲いた徒花でないか。たとえ買い手が米系ファンドに代わっても、独占という地位がそのまま引き継がれる限り、住民が支払う金額は何ひとつ変わらない。

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