ジャケットとワンピースが同じ素材で揃えられたアンサンブルのブラックフォーマル
「アフタヌーンドレス」が正装だが…
30年間葬儀に携わった立場から言わせていただくと、一般参列する女性の喪服(洋装)において、フォーマル度は「アンサンブル>パンツスーツ>ワンピースのみ」という認識で構いません。
夏の暑い日であっても、弔意を示したいなら式場ではアンサンブルスタイルで、ジャケットを着用すべきということです。一般的に男性の場合、ジャケットを着用したほうがフォーマル度は高くなります。そう考えると、ワンピースにジャケットを重ねたアンサンブルのフォーマル度が高いのも頷けるのではないでしょうか。
一方で、「女性の場合、もっともフォーマル度が高いのはワンピース」という説もたしかにあるようです。これは、「ワンピース」と「ドレス」の混乱による誤解です。
私の手元に、1970年に出版され、300万部を超えるベストセラーになった『冠婚葬祭入門』(塩月弥栄子著/光文社)という本があります。この本は当時の冠婚葬祭マナーに強い影響力を持っていて、“女性の場合、葬儀の洋装では黒のドレスが最もフォーマルである”という趣旨の記述があります。この場合の「ドレス」とはアフタヌーンドレスのことで、日中の式典など改まった場で着用する上衣とスカートが一続きになった服のことです。
ネットで「女性 喪服」などと検索をかけると、親族などが着用する“もっとも正装”のスタイルはアフタヌーンドレスだと紹介されていることがありますが、仮にフォーマルウェア専門店で「葬式用のアフタヌーンドレスをください」なんて言っても、黒いワンピースを紹介されるのがオチでしょう。いくら「アフタヌーンドレスが正装です」といわれても、ドレス文化のない日本では、喪服としてのアフタヌーンドレスは一般的に売られていないのが現状です。かくして、日本においては「ドレス=上下一続き→ワンピース」という独自の解釈が独り歩きし、「ワンピースなら(ドレスレベルの)正装」という勘違いが生まれるのだと思います。
ドレスとワンピースの何が違うかというと、いちばんはその「格式」です。上質な素材を使い、格調高いアフタヌーンドレスに比べて、ワンピースはポリエステルなど安価で庶民的なものも多い。こうなると、「格」が高い正礼装とはいえません。
ドレスなら一枚で品格が成立しても、安っぽいワンピースでは礼を欠くことになる。また日本では、男性に合わせてジャケットを羽織っている方がフォーマルに見えるという事情は大きく、喪服を扱うフォーマルウェア売り場のスタッフによってそれがアドバイスされ続けた結果、“常識”として根付いてきました。
