ドライアイスを使わないエンバーミングとは
そして現在、「エンバーミング」という遺体を冷やさずに保全する技術が、日本で普及しつつあります。私が在籍していた葬儀社にはエンバーミングを行う部署があったので、私が担当した遺族の約半数は、ドライアイスではなくエンバーミングを選択していました。
エンバーミングとは、遺体を消毒・防腐し、必要に応じて損傷を修復して、衛生的に保全する処置です。血液を抜いて、代わりに薬剤を注入することで遺体の状態を保ちます。
元々南北戦争で亡くなった兵士を故郷に送る際に、エンバーミングの技術が使われたことが普及する契機になったとされています。
アメリカでは長く土葬が主流で、故人をきれいな姿で棺に納めて対面する習慣がありました。これもエンバーミングが普及した一因でしょう。そのためアメリカの葬儀社スタッフは、エンバーミングの資格を持っていることが珍しくありません。
エンバーミングの資格を持つスタッフを、エンバーマーと言います。日本では、専門学校に2年通い、試験に合格するとエンバーマーになることができます。
エンバーミングのメリット・デメリット
ではエンバーミングのメリットについて解説します。
1つ目は、前述したように遺体の状態を保てることです。薬剤を調整することによって、1~2週間は問題なく遺体を保全できます。前編で述べたように火葬場の待ち日数が長期化する場合、特に夏場は有力な選択肢になります。また家族が海外に住んでおり、帰国までに日数がかかるという場合も有効です。
私の経験では、コロナ禍の時、遺族が入国時の足止めを受けたことがありました。エンバーミングがなければ最期のお別れができないところでした。
2つ目は、闘病生活のやつれや事故による損傷などを、ある程度修復できることです。交通事故で頭部に損傷があるケースで、エンバーミングによって最期のお別れを無事行えるようにしたことがあります。また目立った外見の問題がない場合でも、重力で血液が背面側に下がることで青白くなった顔色を改善できます。
3つ目は、消毒・防腐処置によって、遺体からの感染リスクを下げることができます。