次にエンバーミングのデメリットについて解説します。
1つ目は15万~25万円程度の費用がかかることです。ただし火葬までの日数が長い場合、従来の保全方法では安置施設の使用料やドライアイス代がかさむため、エンバーミングを選んでも費用差があまり出ないときもあります。
2つ目は、血液を抜いて薬剤を注入するという処置に、抵抗を感じる遺族もいるということです。また処置が専用の施設で行われるので、そこまで故人を移動させるのが嫌という方もいます。
3つ目は、自社でエンバーミングを行えるのは大手葬儀社に限定されやすいという点です。2025年にエンバーミングの処置を受けた遺体は8万8531体ですが、これは全死亡者の5.6%に過ぎません。
エンバーミングを行うには、専用施設に対する初期投資と、エンバーマーの人件費を捻出できるだけの葬儀の施行件数が必要です。このハードルを越えるのは大手葬儀社でないと難しいのです。
現在、エンバーミング処置を自社で行える企業は40社程度です。夏の気温上昇と火葬場待ちの日数の長期化を考えると、需要は増えているはずですが供給に限度があるため、全国的に急激にエンバーミングが広まることはないでしょう。
正しく仕組みを理解した上で選択を
またエンバーミング施設を持っている葬儀社による、無理な売り込みは懸念材料です。私がエンバーミングを遺族に勧めた経験では、選択率は5割くらいというのが実感です。ニーズがあって、正しく仕組みを理解した上で選択してもらっていたからです。
中には7~9割の遺族に選ばれている販売実績をうたっている企業もあるようですが、果たして説明責任を果たしているのだろうかと心配になります。火葬までの日数、遺体の状態、費用を踏まえて必要ないと判断したなら、無理をして選択する必要はないと思います。ただ先ほど述べたメリットに必要性を感じるのであれば、万が一の時、エンバーミングの処置ができる葬儀社に依頼するのも選択肢の一つでしょう。
▼▼▼前編▼▼▼
【はじめから読む→】「失敗すると取り返しがつかない」葬儀社の手を借りない「DIY葬」の落とし穴 素人には難しすぎる遺体処置
【プロフィール】
赤城啓昭(あかぎ・ひろあき):1級葬祭ディレクター。葬儀業界歴約30年。運営する「考える葬儀屋さんのブログ」は月間45万PVを達成し、ライブドアブログ OF THE YEARを受賞。近著に「子供に迷惑をかけないお葬式の教科書」。テレビ、新聞、雑誌、YouTubeなどでも葬儀現場の正しい情報をわかりやすく発信中。
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