ビールジョッキのシルエットはいつ見ても美しい
形は想像と違っても、うまさは想像通りのチーズ揚げ
ケンちゃんは生ビールの大ジョッキ。これが、すばらしい、昔ながらの大ジョッキだ。500mL入るかどうか怪しいジョッキで中瓶ビール並みの値段を取る店もあるやに聞いているが、それに比べて、この正々堂々たる大ジョッキはとても明朗な感じがする。
一方の私は、ハーフ&ハーフをいただく。つまみは、カマンベール揚げだ。
チーズ揚げというと、プロセスチーズを餃子の皮で巻いて揚げたものがすぐに思い浮かぶ。それほど好きということなのだが、居酒屋の壁に貼りだされたつまみの短冊にこの一品を見つけると3回に1回は注文しているのではないだろうか。
子供の頃、我が家はよく父たちの麻雀会場になっていたが、そんなおり、母はさまざまなつまみを作って酒と麻雀に興じる父たちをもてなした。チーズ揚げは人気のつまみのひとつで、賑やかなのが好きで父たちの周りをウロチョロしていた私は麻雀に夢中な大人の隙をついてチーズ揚げを口に入れたものだった。
この日、何気なくカマンベール揚げを頼んだ私だったが、実は、頼んだときにぼんやり思い描いていたのは、55年くらい前の三鷹の公団住宅で食べた、母のチーズ揚げなのだった。
だから、実際に頼んでカマンベール揚げがテーブルに運ばれたときに、アッと声を上げそうになった。
1口かじれば、うまさ爆発
コロッケみたいな衣がついているではないか。キャベツの千切りとカットレモン、ケチャップも添えてある。私が思い描いたプロセスチーズの餃子の皮巻き揚げとは、似ても似つかない。これがチーズ揚げかい? ハイカラすぎだろといささか混乱してしまうのだけれど、これが浅草なんだと、すぐに我を取り戻した。
ケチャップにチョンとつけて、カマン揚げを口に入れると、うまいんだ。さすがだね。 ドレッシングのかかった千切りキャベツに箸を入れたときに、レモンを搾るのを忘れていたことに気づき、ぎゅっと搾ってから、もうひとつカマン揚げを食べる。そしてハーフ&ハーフをぐびりとやる。なんとも幸せな気分になってくる。

