円高が続くと恩恵があるのはどのような企業か(大阪ガス本社。時事通信フォト)
為替相場が円高に振れると、輸出企業には逆風となる一方、輸入コストの低下が利益を押し上げる企業もある。ただし、その恩恵が業績に表れる仕組みやタイミングは一様ではない。日米の金融政策に注目が集まるなか、円高を追い風にできるのはどのような企業か。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
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日米の金融政策が左右する円相場、「円高メリット銘柄」に注目
外国為替市場は、7月末の日米協調介入を境に地合いが変わった。7月28日に163円91銭と約39年半ぶりの円安水準をつけた後、日本の2日連続介入に米財務省が合流する異例の展開となり、8月上旬には156円台まで水準を切り下げた。8月は156円台後半~159円台のレンジで方向感を欠いたが、9月に入って再び円高方向に大きく振れている。背景にあるのは、日米金融政策の動きだ。
日銀は6月に政策金利を1.00%へ引き上げ、約30年ぶりの水準としたが、7月末は据え置いている。来る9月17~18日会合での1.25%への追加利上げ観測が高まっている。高田審議委員が「連続利上げもあり得る」と踏み込んだ発言をしたことも、市場金利を押し上げる要因となっている。
米国は7月FOMCではFF金利を3.50~3.75%に据え置いたものの、12人中3人が利上げを主張する「タカ派の反対」が出た。しかしながら9月4日に発表されたアメリカ雇用統計での予想を大きく上回る雇用者数の増加に、再び利上げ観測が高まっている。また、ベッセント米財務長官が植田和男・日銀総裁に為替の過剰変動回避を求めたと伝わったこと、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が基本ポートフォリオを見直し、日本国債の買いに動くとの思惑も、円買い材料として意識されている。
こうした状況の中、足元のドル円は153~156円を中心に推移している。9月の日米中銀イベント(15~16日FOMC、17~18日日銀会合)で「米利上げ見送り+日銀利上げ」が重なれば、日米の金利差は縮小し、150円台前半までの調整が視野に入る。当然、逆方向のリスクも大きい。中東情勢を受けた原油高がインフレ再燃を意識させれば「有事のドル買い」が戻り、9月10日の米8月PPI、11日の米8月CPIが上振れすれば160円台回復もあり得る。高市政権の「責任ある積極財政」が財政懸念として円売り材料になる構図も残っている。
円高が進めば、輸入比率の高い企業は調達コストが下がり利益率が改善しやすいというのが教科書的な整理だが、一方で、輸出に頼っている企業の売上や利益については逆風となる。一方で日本国内で大半の売上を上げている企業にとっては追い風となる。今回は、円高を業績の追い風とできる銘柄をピックアップしてみよう。
原料コスト低下で生まれる「タイムラグ差益」の効果
【大阪ガス(9532)】
都市ガスには原料費調整制度がある。LNGなどの原料価格や為替の変動が販売単価に反映されるまでに数か月のズレが生じる仕組みで、タイムラグが発生する。原料コストが下がる局面では、販売単価がまだ高いまま据え置かれるため一時的に利益が膨らむ。これがタイムラグ差益だ。逆に原料コストが上がる局面では差損になる。
大阪ガスの決算は、この関係が教科書のように出ている。
2026年3月期は、国内エネルギー事業で原料費調整制度に基づきガス販売単価が低めに推移したことなどにより減収となった一方、経常利益は増益。第3四半期時点で会社側は「国内エネルギー事業におけるタイムラグ差益の拡大」を増益要因として明示している。加えて海外エネルギー事業では、米国フリーポート液化基地(LNG)や同社が全株式を取得し米国エネルギー上流事業の推進母体としているシェールガス開発会社のサビン社が好調だった。
ところが2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)は一転して、タイムラグによる減益影響などにより前年同期比は大幅な減益となった。この時期はドル円が163円台まで進み、中東情勢を受けた原油高も重なった局面である。なお、タイムラグ影響を除いた経常利益は増益を確保している。
つまり、7月末の協調介入以降の円高が続けば、次の四半期からタイムラグ差益が戻ってくる公算も考えられる。同社を見るときは、差益の額そのものより「タイムラグ影響を除いた経常利益がどう動いているか」を確認し投資戦略を狙っていきたい。
株主還元にも積極的で、上限800億円の自己株式取得を2027年3月31日までを取得期間として実施し、DOE水準は3.5%へ引き上げていることも今後の株価への期待を集めるだろう。
