ヘッドホンは首にかけるのに…
その一方で、ここ数年、電車内や街中でヘッドホンをつけたり、首にかけたりしている人を見る機会は明らかに増えた。これはどういうことなのか? 音楽誌の編集者Sさん(40代/男性)はこう推測する。
「確かに首掛けイヤホンが“首に何かがあるのは邪魔”という理由で廃れたのに、もっと大きなモノを頭に装着するヘッドホンが復権したのは辻褄が合わないようにも思えます。しかし、ヘッドホンはつけること自体がファッションで、高品質なラインナップも存在する。いわばファッションアイテムであり、自己主張の道具でもあるのです。首掛けイヤホンにはそういった主張がない。これは大きな差です。
合理性はあるのに廃れたアイテムというと、MDが思い浮かびます。MDは『CDより小さい』『カセットより使いやすい』『音質は良好』『録音できる』『編集しやすい』など、明確なメリットがあったのに、iPodが登場してディスクを持ち歩く必要がなくなり、結果的にCDより前に市場から消えました。
首掛けイヤホンは実用品としてかなり優れたアイテムだと思います。レジで店員に会計を頼む時、電車でアナウンスを聞く時、誰かに話しかけられた時は片手で耳から外すだけ。置き場所を探す必要がありません。一方でスマホから分離しているので煩わしさはない。使用頻度が高い人にとっては“最適解”だと思います。それでも、完全ワイヤレス派の人にとっては『そこまでして失くしたくないの?』という感想なのでしょう」
ワイヤレスイヤホンはすっかり忘れ物・落とし物の“常連”になっている。それでも、ケーブルのない完全ワイヤレスが主流になった。かつて合理性を備えながら時代の流れに押し流されたMDと同じように、首掛けイヤホンもまた、「便利だったのに、いつの間にか消えていた」製品になってしまうのか。