店によってさまざまな「お通し」(イメージマート)
居酒屋で店と客の間でトラブルになりがちなのが「お通し(突き出し)」だ。特に海外では馴染みの薄い慣習だけに、外国人観光客との間で「こんなもの頼んでいない」「いや、決まりです」と店と客の間でひと悶着があることも。インバウンド客も増えてきているなか、「不透明な慣習は廃止すべき」といった声もあるが、かつてお通しというシステムに否定的だったネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「そこまで目くじらを立てないでいいのでは」と最近感じるようになったという。なぜお通しに理解を示すようになったのか。居酒屋通い歴33年の中川氏が綴る。
チェーン居酒屋で見たショッキングな光景
私も過去に当サイト記事〈居酒屋の「お通し」「突き出し」に賛否、あるべき姿を考える〉で、お通しシステムに異議を呈し、「謎の煮物(400円)」や「麻雀牌大の厚揚げ煮2枚(500円)」など残念すぎるお通しを紹介してきました。この記事は2017年のものですが、現在もお通しは安い店で300円、ボリュームゾーンは400~500円です。物価高の中、各種メニューは値上がりしているのに、馴染みの店ではお通しの値上げはとんと経験がありません。高くても600円です。
居酒屋としてお通しは売上を確保するためにも重要なもの。実質的にはテーブルチャージではありますが、お酒を頼んだ後に、注文した料理が届くまでにすぐつまみが出てくるのはありがたい。店からすれば、ただテーブルチャージを取るだけでは味気ない、お酒を頼んでくれる客へのサービスという側面もあるでしょう。
元々飲食店の経営者や従業員の知人は多かったですが、私自身がカフェ兼バーでバイトをするようになってから、より飲食店の経営状況について詳しく話を聞く機会が増えました。そのため、お通しへの違和感が減り、理解を示せるようになったのかもしれません。
元々お通しへの違和感を覚えたのは、2000年代前半に某チェーン居酒屋で従業員が巨大な業務用ザーサイと、業務用ラー油漬け豆モヤシの袋から小鉢に入れている様子を見たからです。我々は2人だったので、工夫して2種類出してくれたのですが、萎えました。今調べたら業務用の1kgのカットザーサイには498円のものがあり、1kgの豆モヤシは992円です。多く見積もっても30gしか入っていないわけで、原価はそれぞれ15円、30円です。コレに500円を徴収されたので不満を持ちました。
しかし、その後、レベルの高いお通しにも出会うようになり、500~600円のものでも納得できるようになったのです。300円だったらザーサイやカニカマとキュウリとワカメの酢の物や、業務用のひじき煮が出てきて「まぁ、そんなもんか」と納得できる。
500円クラスになると、さすがに袋を開けただけではなく、牛スジ煮や肉ジャガが出てくることが多い。そこでマヨネーズまみれのマカロニとキュウリとニンジンが出てくると残念な気持ちになる。これは300円か400円であってほしかった……。
ただ、店の側も時に発生するお通しを巡るいざこざを通して「最低限、客が納得するレベルのものを出さなければならない」というのは十分分かっているんですよ。300円だと業務用の袋を開けただけorキュウリやワカメなど安くてあっさりした食材を使ったもの。400円だとチクワとコンニャクのピリカラ煮、500円だと肉類や魚の南蛮漬けなども入った自家製……等々。
