「働き方改革」で失われた「責任感」
そしてこの次に登場したのが、Z世代です。先ほど述べたように気質はゆとり世代と共通するところが多いのに、なぜ私はゆとり世代より“物足りない”という印象を抱いたのでしょうか。前編でも述べたように、Z世代に責任があるわけではなく、社会環境や入社した時期の業界の事情によって、仕事ぶりに違いが生じているのだと私は考えています。
細かい点では、小さい頃からスマホを使いこなしていた弊害なのか、意外とPCに不慣れな点や、長いテキストを読むのが苦手なスタッフが多かったことです。ただこれらは大きな問題にはなりません。大きかったのは、働き方改革で葬儀業界が分業制を進めたことで、担当者としての意識や責任感を持ちにくくなった点でした。「遺族のために役に立ちたい」という情熱や「自分ががんばらないと」という使命感が希薄なのです。
以前、この連載でも取り上げましたが、働き方改革関連法が2019年から施行され、企業には長時間労働の改善が求められるようになりました。2020年、埼玉県の大手冠婚葬祭業者に対し、労働基準関係法令違反で、企業名を挙げて長時間労働の改善指導が行われたこともあり、葬儀業界は労働環境の改善に動きます。
分業制の浸透で遺族対応が淡白になりがち
公休未消化と長時間労働の対策として行われたのが、「分業制」の導入です。
かつて、人が亡くなってから葬儀を終えるまでに必要な一連の業務は、病院搬送・打ち合わせ・設営・通夜担当・葬儀担当・火葬場担当という内容で、全て一人の担当者が行っていました。このメリットとして、担当者は故人や家族の事情を把握しやすいことと、遺族との人間関係が構築しやすいことが挙げられます。
一方で、葬儀はいつ依頼を受けるか予測がつかず、また通常3~5日間ほどかかるので、一度担当者になると公休の予定が飛んでしまいます。担当を終えた段階で夜勤の予定が入っていたりすると、ずっと休みが取れないループに入るわけです。これを解消するために分業制を導入し、各工程をその日時に出勤予定のスタッフに振り分けるようになりました。この結果、打ち合わせと通夜と葬儀でそれぞれ担当が変わることも珍しくなくなったのです。
Z世代にとって葬儀業界は、入社したときから休みが保障されている業界だったのです(ただし少人数で分業制に移行するのが難しい零細葬儀社は、若手の労働力不足により悩まされます)。
余談ですが、私は入社25年目で、有給休暇の申請方法をゆとり世代の新人に教えてもらったことがあります。休みの日の朝、電話がかかってきて出社させられていた私にとって隔世の感があります。
分業制では遺族と過ごす時間が短くなり、引き継ぎを前提に仕事を進めるため、担当者としての意識や責任感を持ちづらくなった結果、遺族への対応が淡白になりがちです。氷河期世代は、自主的に故人の命日には遺族へ電話をかける人も多かったものですが、Z世代にそういう意識は希薄な印象です。故人の思い出話を聞かせてもらっても給料が上がるわけではありませんが、私は多少なりとも遺族の気持ちを癒せる効果があると信じています。Z世代はコスパもタイパも悪いと思うのかもしれません……。