スナックが立ち並ぶ立石の風景
今も残る昭和の飲み屋街
次々と「昭和の飲み屋街」が消える一方、しぶとく生き残っている街もある。立石のような「呑兵衛の街」として真っ先に思い浮かぶのは赤羽です。戦後の闇市に由来する歴史もあり、現在も大衆的な飲み屋街の雰囲気を残しています。いささか主観的ですが、街全体に“明るい時間からお酒を飲んでもOKな雰囲気”が漂っています。交通の便が良いため、わざわざ赤羽まで飲みに来る人も少なくありません。
蒲田も赤羽に劣らぬ呑兵衛タウンと言っていいでしょう。蒲田の特徴は“飲み屋ゾーン”が広いこと。JR蒲田駅の東口と西口の両方に飲み屋街が広がり、徒歩10分ほどの京急蒲田駅方面にも飲み屋はたっぷりあります。選択肢の豊富さは目を見張るものがあります。
このほか、品川駅の港南口、大井町の東小路や平和小路、大森の通称「地獄谷」などにも、昔ながらの酒場が集まる一角が残っています。高層ビルが立ち並ぶ品川駅周辺にも、少し路地に入れば昔ながらの飲み屋が見つかる。そんな街の表情の違いも面白いところです。
JR中央線沿線なら高円寺や阿佐ヶ谷、JR総武線沿線なら亀戸や小岩も飲み歩きが楽しい街です。三軒茶屋の三角地帯、中野駅北口、門前仲町の辰巳新道などにも、細い路地に小さな酒場が集まる一角が残っています。店先から焼き鳥の煙が漂い、どの店に入ろうかと迷いながら歩く。そんな楽しみ方ができる場所は、今も東京のあちこちにあります。
こうして見ていくと、東京にはまだまだ歩いてみたい飲み屋街が残っています。ただ、一部では再開発計画が進められており、店の閉店や建物の建て替えによって、なじみの景色がいつ変わってもおかしくありません。
立石のような街並みは、いったん失われると、簡単には戻ってきません。気になる街があるなら、いつか行こうと思っているうちに、ではなく、今のうちに一度歩いてみてはいかがでしょうか。思いがけない路地や、ふらりと入りたくなる酒場が、まだ見つかるかもしれません。
【プロフィール】
金子則男(かねこ・のりお)1973年生まれ、東京都出身。20代の頃からライターとして活動。乗り鉄、ドライブ、散歩、登山など、幅広く“移動”を愛する。
