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春闘「3%賃上げ」 今年だけのアップでは日本の未来はない

3%の賃上げは実現するか

 今春闘では、安倍政権の要請に応じる形で経団連も「賃上げ3%」の旗を振っている。経営者らからは早くも「高いハードルだ」との声が出ているが、「それが実現できなければ、日本の将来が危うくなる」というのはファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏だ。花輪氏が解説する。

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 経団連と連合のトップらが春闘に向けた考えを説明する「労使フォーラム」が開かれ、今年の春闘が事実上スタートしました。経団連は賃上げの水準として「3%」という数値目標を掲げており、労使交渉では去年までの水準を上回る賃上げが実現するかが焦点となっています。

 私は家族の仕事の都合で、成長著しいシンガポールに住んでいます。ここでは「賃上げ3%」はごく当たり前の数字です。シンガポールの2016年の平均月収は4056シンガポールドル(日本円で約34万円)ですが、2006年は2449シンガポールドル(約20万円)だったので平均的に「毎年3%」を上回る賃金上昇率になります。

 対する日本は2016年の平均月収は30万4000円、2006年は30万1800円、1997年は29万8900円──と失われた20年の間ほとんど賃金が上がっていません。この間にシンガポールのような成長をしている国に賃金も追い抜かれてしまったのです。

 もちろん両国の物価上昇率も異なり、日本は物価もほとんど横ばいの状態なので日本で暮らしている分には影響がないかと思われるかもしれません。ですが、日本人が海外に出て行って暮らすとなると、非常にきつくなります。シンガポールの家賃相場では月20万~30万円程度が一般的だからです。サンフランシスコなどさらに物価の高い都市に住むことは非常に厳しいでしょう。子供が留学したいと言いだしても、非常に難しくなります。日本だけ賃金が上がらない状態だと、日本国内に留まるしか選択肢がなくなってしまいます。

 加えて言えば、このように賃金が上がりそうにもない国に、優秀な人材が集まるとも思えません。すると日本の経済成長はますます覚束なくなります。

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