大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

アベノミクスを牽引するはずの「未来投資会議」がお粗末な理由

 20世紀は現場ベースの連続的な社会変化の時代だった。しかし、21世紀はサイバーベースの不連続なデジタル・ディスラプション(デジタル技術による破壊的イノベーション)時代である。そこで優先されるべきは「グローバル最適化」であり、生活者、消費者、患者、受益者の立場から見て不要な規制は、すべからく廃止すべきなのである。

 そのためには、いわば「縦のものを横にする」発想が必要だ。たとえば農業は農協の組合組織を株式会社化し、意思決定ができるようにしなければ生き残れない。金融サービスは、全銀システム(*)を経由しなくても、ブロックチェーンを用いれば安全な決済が世界中とできる時代である。

【*全銀システム/全国銀行データ通信システム。決済業務の中核を担うオンラインのデータ通信システムで、日本のほとんどの預金取扱金融機関が参加しており、そのコストは預金者の手数料によって賄われている】

 21世紀対応のサービスとシステムを構築できるように、その障害となるすべての法律を書き換え、すべての既得権益を排除しなければならないのだ。それを理解できないどころか、20世紀の古いシステムの延命を職務と考えている政治家、役人、有識者などに、未来を語る資格はないのである。

※週刊ポスト2019年6月21日号

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