リタイア後の自宅の処分は早いうちにしたほうがいい
リタイア後に都心のマンションから郊外への住み替えを考える人も、逆に郊外の戸建てから都心居住で生活のダウンサイジングを選ぶ場合も、不動産の“活用”が資産寿命を延ばす鍵になる。介護アドバイザーの横井孝治氏が指摘する。
「長年住み慣れた地域を離れ、新しい生活圏に適応していくのは年を取ってからではなかなか難しい。住み替えで自宅の処分を考える場合、望ましいタイミングは66歳です」
定年後に雇用延長でフルタイムで働く期間は、通勤を考えると住環境を変えるのは難しい。だが、65歳になると、完全リタイアか、働くにしても再就職で職場が変わったり、パートタイム勤務のケースが多くなる。そのタイミングで第2の人生に向けた住み替えを行なうという考え方だ。
「65歳から次の職場や住居探しを始めて66歳で引っ越しをする。その際に自宅の処分をするのです」(横井氏)
自宅の処分といっても売却とは限らない。資産価値が高い都心の駅近のマンションを所有しているなら、自宅を高く賃貸に出して自分は家賃が安い郊外の賃貸マンションに住む。そうすれば家賃収入の差額が生活費の足しになるし、いよいよ老人ホームに入居を考える年齢になる頃に売却する方法がある。
一方、郊外の戸建てから都心の小さいマンションに住み替えるケースは考え方が違ってくる。郊外の古い一戸建てとなると、借り手を見つけるのは難しい。榊マンション市場研究所主宰の榊淳司氏の話である。
「郊外の古い戸建ては都心の中古マンションに比べて値下がりリスクが大きい。たとえば東京・中野区の築30年のマンションは10年後でも2~3割の値下がりにとどまると予測できるが、八王子あたりの築30年の一戸建ては10年後は半値くらいまで下がるリスクを考えておいた方がいい」
郊外の戸建てからの住み替えを考えるなら、借り手を探すより、早めに売却することを視野に入れたほうがいいというアドバイスだ。
別掲の図のシミュレーションのように、専門家の勧める「66歳で」売却するか、5年遅れてしまうかで数百万円の差が生じるのだ。
※週刊ポスト2019年8月2日号