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政府の年金制度チェック「財政検証」に隠されたウソ

ありえない「経済成長率」を想定

 今回の財政検証では、経済成長率や物価上昇率などが高い順に、将来、どれくらいの年金がもらえるのか、「6つのケース」が試算された。年金の給付水準を表すものが「所得代替率」で、年金額が、その時の現役世代の平均収入の何%かを示す数値だ。

 政府は「所得代替率50%」の確保が目標だと公言している。つまり、「現役世代の収入の半分あれば、老後も充分に暮らしていける」という前提なのだ。

 そして今回の財政検証では、将来的にもこの50%ラインを確保できそうだと発表して、「ほら、年金は安心でしょ」とアピールした。まずここに、1つ目の嘘が隠れている。北村さんが言う。

「現在の年金の所得代替率は61.7%です。それでも、金融庁の報告書によれば、毎月の生活費が5万5000円も不足することになっている。それが将来的に50%まで低下すると、今よりも実質的に約2割も年金が減ることになります。それで生活できますか? 50%をキープできたからといって、全然安心できる水準ではないわけです」

 そもそも、政府がいう「50%の確保」さえも、“絵に描いた餅”なのだ。社会保険労務士の蒲島竜也さんが指摘する。

「たしかに財政検証が想定した6つのケースのうち、3つは50%以上を確保しました。しかし、それらは経済成長率プラス0.4~0.9%が前提で、あまりに楽観的です。将来の人口や労働力の減少を考慮すれば、マイナス1%程度は覚悟する必要がある。実際には、マイナス0.5%を想定したケースが現実的です。その場合、2052年に年金の財源である『積立金』が消滅して、年金制度は実質的に破綻し、所得代替率は37%程度まで激減します」

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